見えない邂逅
虚圏。黒崎一護一行がキルゲ・オピーとの戦いで巻き起こした霊子の乱れが漸く収まってきた頃。ネリエル・トゥ・オーデルシュヴァンクは浦原喜助が開発した子供と大人の姿を行き来できる装置を身に着け、久々に大人の姿を楽しんでいた。先の戦いでは子供の姿だったため参戦できなかったが、これでやっと一護の力になれる。この装置の解説はよく分からなかったものの、ネリエルは今後装置を外すことはないだろうと思った。
さて、この頃になると負傷して気絶していた第三の従属官たちも復活し、浦原喜助の話を一通り聞いていた。絶滅した筈の滅却師が徒党を組んで尸魂界を攻め、挙句の果てには三界が崩壊するおそれがあるという話はまるで御伽噺のようで呆気に取られたが、キルゲの霊子の絶対隷属を見たアパッチたちは沈痛な面持ちで俯いていた。
浦原喜助は一度尸魂界と通信を結んだ後、またどういうわけか再通信していた。丁度その時ネリエルはアパッチたちと一緒にテントの外にいて、浦原の楽しげな声が聞こえたためにテントに近寄ったのだ。もしかしたら一護が画面越しにいるかもしれない―――そんな風に期待していたところ、入り口の傍でグリムジョー・ジャガージャックがあぐらを組んで座り込んでいることに気づいた。
「何してるのよ」
正直グリムジョーに対し良い思い出は何一つとしてないのだが、無視するのも気が引ける。そういうわけで話しかけたというのに相変わらず彼はネリエルにまともな返事をすることはなく、ただじっと足元の砂を見つめていた。
何なのよもう、と内心不貞腐れてテントを開こうとしたその時、聞き慣れない女性の声が耳に入った。
「! この声…!」
ミラ・ローズが驚きの声を上げたので知り合いかと問うたところ、何故か苦虫を噛み潰したような顔をして従属官たち三人で顔を見合わせた。「いやー!スミマセンね突然お呼び出しして!最近お元気かどうかアナタが気になってたんス!」《…何企んでるんですか?》「その返事酷くないスか?!」浦原は相手とは元々知り合いのようだ。相手の声は猜疑心に満ち溢れた声色をしていて、彼をあまり信用していない。
「……!」
「待ちなさいアパッチ」
思わず入ろうとしたアパッチを止めたのは、シィアイ・スンスン。
「………良いんですの?お会いにならなくて」
そして意外なことに彼女は座り込んでいるグリムジョーに声をかけた。
「画面越しでもお会いになれば、心持ちが違うのではなくて?」
グリムジョーは一言も返さない。拒絶を表していた。それを見たアパッチは入ろうと手をかけていたテントの袖を離し、他所を向いた。
「入らなくていいの?」
「あたしたちは入れませんわ」
「?」
それきり黙り込む三人とグリムジョーを交互に見やり、ネリエルは首を傾げる。
少ししたのち、通信を切った浦原がテントから出てきた。
「あれえ?皆さんお揃いで。中に入ってきても良かったんスよ?」
「そうしようかと思ったんだけど………」
「あれあれ?グリムジョーさんもしかしてずっとそこにいました?え〜〜〜入ってきてくれたならブッ!!!」
突然浦原の顔面を殴るグリムジョー。
「痛いっス!何するんスか!?!?」
「うぜえ」
「あっちょっ…人の顔殴っておきながらどっか行かないでくださいよ!」
喚く浦原に一瞥もくれることなく彼は響転で去った。ちぇ、と呟く浦原にミラ・ローズが呆れた目を向ける。
「………アンタもしかしてわざとかい?」
「なんのことっスか?」
何も知りませんよと追及を軽く避けた浦原は口笛を吹きながらテントの中へと入っていった。
「一体何なの???」
唯一事を把握していないネリエルは、従属官たちの複雑そうな顔色を見つめるしかなかった。