高杉亡き後の銀時
「高杉死んだ」
あの戦いから暫くして銀時がからくり堂を訪れた。顔を合わせた途端最初の言葉を繰り出した彼。驚きのあまりじっと彼の顔を見つめた。
源外は出張、斉藤も仕事が忙しいようで来る予定はない。客もいない。正真正銘、燕と銀時の二人きりだった。ひとまず燕はスパナを置いて、銀時を座敷に座らせた。
「よく知らねえけどお前あいつと知り合いだったんだろ。だから伝えに来た」
俯いたまま極めて事務的に述べる銀時の頭頂部をぼんやり眺め、燕は最後に見た高杉の姿を思い浮かべる。その間、銀時は何も話さなかった。それ以上言う必要は何もないと、頑なに口を噤んでいた。
「高杉さん、戦争が終わってから会いに来てくれたんですよ」
「……は?」
突然何の話だと、虚を突かれた声を上げる銀時を無視して燕は続ける。
「ボロボロで怪我いっぱいしてました」
「……」
「『済まねぇ』って言われました」
あの時の彼は本当に恐ろしかった。重い体を引きずって来たのだと言わんばかりの、ふらふらした足取りだった。そして目が、どこまでも昏かった。高杉は松陽がどのように死んだのか一言たりとも口にしなかった。だからその時燕は、松陽は普通に処刑されて、彼らはそれに間に合わなかったのだと解釈した。
「『あなただけでも無事で良かった』」
「!!」
「って言ったら抱きつかれて泣かれました」
今にして思えばあの瞬間、高杉は燕を通して松陽を見たのだろう。でなければ彼があんな風になるわけがない。
「万事屋さん」
びくりと、彼の肩が跳ねる。そしておもむろに銀色の頭が上がる。まるで叱られた子供のようだった。
燕はできるだけ柔らかい声音で言った。
「“あなただけでも無事で良かった”」
銀時は何も言わなかった。ただその真っ赤な瞳をぐにゃりと揺らしながら、もう一度俯いた。