18.たとえどんな処にいようとも

 “流星の滝”の奥、水音が響く奥の道。洞窟の入口付近よりも僅かに暗さが増したその道には、キラキラと輝く鉱石が埋められている。
「綺麗な道だね」
 ダイゴは鉱石のように目を輝かせて、辺りを忙しなく見渡している。彼の後ろにはソライシ博士と博士の助手数人が同行していた。ダイゴとは違い彼らは手に機器類を持って計測を続けている。
 今回彼らがここに居る理由は、“流星の滝”の地面の成分を調べることである。鉱石などが沢山埋め込まれたこの地帯は、掘れば珍しい石が出るかもしれない。その為にダイゴとマコトも足を運んでいるのである。
「ダイゴさーん、勝手にどこか行かないでくださいよ」
「もーマコトったら。そんな子供扱いしないで。僕を何歳だと思ってるの」
「二十五歳」
「…うんまあそうなんだけど」
 ダイゴの行動に目を光らせながら、マコトもノートパソコンを弄る。一応協力要請が出ているので必要最低限は手伝わなければいけない。
「ダイゴくん、この石は…」
「ああそれはですねえ…」
 ニートだが石マニア。こういう時の彼はとても役に立つ。
 集団で居るなら問題無いか。そう思い、マコトは広範囲の計測をすることにした。彼らが見えるところまで離れて、パソコンに入っているソフトを起動させる。―――ピピッ。
「ん?」
 今の小さな音はマコトのパソコンから出た音ではない。耳を澄ませると、カチンカチンという一定のリズムを刻む音も聞こえる。
「…何?」
「……マコトー、ちょっとこっち…」
 ダイゴが彼女の名前を呼んだその時、ドォォン!!という爆発音が轟いた。砂埃が立ち込め辺り一帯は見えなくなる。
「マコトッ!大丈夫!?」
 漸く砂埃も収まり、ダイゴは目を擦って彼女が立っていた場所に駆け寄る。「っわ!」彼女が立っていた場所には、大きな穴ができていた。
「…なんてことだ」
 彼女の居た場所だけではない。彼女の居た場所のそこから先までずっと、大きな穴ができている。おそらくマコトが立っていた場所は地盤が緩くなっていたのだろう。先程の爆発でマコトが立っていた辺り一帯は、衝撃に耐えきれず床が抜けてしまった。
「…っマコト!」
「ダイゴくん!?」
 気がつけば、ダイゴは宛も無く走り出していた。
「…あれ?ダイゴさん?」
 大広間に出た途端に聞こえた、男の子の声。振り向くとユウキがポカンとした表情でダイゴを見つめていた。
「どうしたんですか?そんなに慌てて…」
「ユウキくん、着いて来てくれ。緊急事態なんだ」
 ダイゴの切羽詰まった姿に何かを察したのか、ユウキも顔を引き締め「分かりましたっ」と答えた。ユウキの声量に、ダイゴを呑み込みそうだった滝の音が少し小さく聞こえた。