22.濁る宝石

 以前ミクリに言われたことがあった。ダイゴは嘘が下手だね、と。
 だから気づいてくれるものだと思っていた。あんなことを言っても僕の本心じゃないって。本当は傍に居てほしいって心を。

 “ダイゴさんって本当に嘘がヘタですねー”

 心のどこかでそんな言葉を期待していた。勘が鋭くて頭の良いマコトは、僕が無理して言ってるってことが分かってて、呆れながらそんなことを言ってくれるってどこかで思ってた。

 でも、そんなことにはならなかった。

 マコトはただ要領良く同意して、部屋を出て行った。パソコンを置いて行ったんだから、きっともう、二度と僕の傍で仕事しないってことだろう…デボン、辞める気なのか。

「…マコト」

 何であんなこと言ったんだろう。マコトが大事で、僕は捕らわれている彼女の姿を見たくなくて、あんなことを言ってしまった。
 でも違う。本当は。僕は。………。

「………ッマコト…!」

 これで良かったんだ、これで。マコトがデポンを抜ければ、パソコンや情報から離れれば、彼女は目をつけられなくなる。いっそのことシンオウに帰ってしまえば良い。そうすればマコトはもう関係なくなる。マグマ団も流石にシンオウまでは追ってこないだろう。マコトの身内はジムリーダーみたいだし、マコトの無事は保障されたようなものだ。
安心できる環境だ。もうあんな姿を見ずに済む。

 なのに何で、こんなにも苦しいんだろう。