「なーあリョウ!暇ァ!!」
「うるさいなあ…ちょっと黙ってよー。オーバは声が大きいんだから」
俺の同僚のリョウは、耳を塞いで煩わし気に後ろに下がった。くそ、むかつく。
最近めっきりチャレンジャーが減っちまったリーグ施設は静かなモンだ。多分こんなにもチャレンジャーが少ない理由は、デンジの所為だろうな。あいつ漸く本気出したのか。職務怠慢してるよりは断然良いけど、あいつが本気になっちまうと俺らの仕事が減るんだよなー。
「…うん、それで?え、今から?良いよ良いよーどうせヒマだし!」
「?」
「分かった、今から行くよ。……ねえオーバ、ボクこれから女の子と遊んでくるから!」
「…はあ!?」
「チャレンジャー来たら連絡ちょうだい!それじゃ!」
あいつ暇だからって女の子と遊びに行きやがった!羨ましい!……じゃなくてッ!!あいつも職務怠慢だ!
仕方ねェ…これ以上ここでグータラしてても時間の無駄だし、ナギサにでも行くか。最近仕事中にナギサに行くことが増えてる気がする。
リーグからナギサまでは割と近いから、ひでんわざの“そらをとぶ”を使えば十分ほどで行ける。
「おーいデンジー」
ナギサに着いてから邪魔するトコって言えば、やっぱデンジのトコだろ。どうせまた機械でも弄りまわしてるんだろうな。
「違いますよー。ここの配線はこっちの緑のコードです」
「あ、そうなのか」
「説明書読んでないでしょー」
「かったりーんだよ」
客?にしては会話が変だな。つーかこの声って…。
「マコト!?」
「…あれッ、オーバじゃないですかー。お久しぶりィ」
「んだよまた来たのかアフロ。職務怠慢だぞ」
「オメーに言われたくねーよ!つか何でマコトが居るんだよ!」
お前ホウエンで仕事してるんじゃないのか!?
その旨を伝えたら、マコトはなんてない顔で、
「クビになりました」
と言った。
「へークビ…ってクビィ!?」
「一々うるせーぞオーバ。クビだっつってんだろうが」
いやいや普通驚くだろーが!何でデンジは至って冷静なんだよ!?
「いつからこっちに?」
「一週間ほど前から」
一週間前か…丁度チャレンジャーがぱったり来なくなった時期だよな…ん?
「マコト、一応訊くが、お前今どこで働いてんだ?」
「ここでジムトレーナーとして働かせていただいています」
ああ成程、デンジが別に本気出してるわけじゃなくて、ジムトレーナーであるマコトの時点でトレーナーたちは皆詰んでるのか。
俺の呆れが顔に出てしまったのか、不意にデンジが俺を睨んだ。「んだよ別に良いだろ」そんな言葉を落として。
「にしてもクビかぁ…お前も大変だったんだな」
「まあ…そうですね」
「でも俺としてはちょっと嬉しいかも」
俺が言った言葉にマコトとデンジが顔を見合わせる。
「だってよ、三人が揃うのって久しぶりじゃねーか!」
「…あー」
「成程」
お前らもっとテンション上げろ!!
マコトとデンジの足元には機器類が多数。懐かしいな、よくこうして二人が機械を弄ってる傍で、俺がどうでもいい話をしてたっけ。今もこうしてこんなことができることに、嬉しさが胸に沁みた。
「…ま、きっともうシンオウから出ることもありませんし、こんな光景当たり前になりますよ」
だから、マコトがちょっぴり悲しそうにそう呟いたということに、俺は気づけなかった。