32.乗っ取られたティータイム

 静寂さえも苛立った様子。その時のデンジは触れてしまえば電気を浴びさせられそうな、ひどく荒々しい雰囲気を纏っていた。無理もないと、ダイゴは冷静に思った。
「何しに来た」
 ダイゴとデンジは面識はあまり無い。地方の違うチャンピオンとジムリーダーだ、催し物で顔は見ても話す間柄では無かった。だがこんなにもデンジが自分を敵対視しているところを見ると、どうやらマコトが事の顛末を全て話してしまったらしい。そんな彼女の行動は、ダイゴの価値はその程度だと思い知らしめているようだった。彼からクビだと言われたことは大したことではないと言われているようだった。
「…マコト、居る?」
「あいつに会わせるつもりは無いぞ」
 デンジが間髪容れずに言うと、ダイゴはあからさまに肩を竦めた。
「そう言う権利、君に無いんじゃない?」
「そんなモンどうだっていい。今更お前に会ったところでどうすんだって言ってんだ」
「…どうやら僕は随分嫌われているらしい」
「今頃気がついたのか」
 そして沈黙。両者譲るつもりは全く無い。
 そんな中、沈黙を割るように「デンジー!」とオーバの声が響いた。空気を読め、と言いたくなる声量だ。
「ダ、ダイゴ!?」
「やあ久しぶり。今日はマコトに会いに来たんだけど、このどケチくんが頑なに会わせてくれないんだ」
「誰がどケチだ似非紳士め。さっさとホウエン帰れ」
 (俺、とんでもない時に来ちまったな)オーバは自分の軽率な行動に心から後悔した。
「大体何で来るんだよ。あいつクビにしたんならもうどうだって良いだろ」
「君、僕が本意で彼女をクビにしたと思ってるのかい?」
「思ってようが無かろうが、お前があいつを突き放したとこに変わりはないだろ」
 デンジが鋭く言うとダイゴは一瞬怯んだ。本人もそこは認めているらしい。
 しかしそれで諦めるような簡単な男ではなかった。ダイゴは大きな溜息をつくと「分かった、じゃあこうしよう」と言った。
「バトルで決めよう」
「あ?」
「僕が勝ったらこのままマコトを探す。でも君が勝ったら僕は大人しくすぐさまホウエンに帰ろう。それなら文句無いだろ?」
「…良いぜ」
「ちょ、デンジ!」
 慌ててオーバが止めようとするも、デンジは聞かなかった。別にオーバはデンジが弱いとは思っていないが相手はチャンピオン。しかも相性的にデンジのほうが不利だ。心配せずにはいられない。
「おいデンジ!ちょっと落ち着けって…」
「なーにやってるんですかー?」
「「!?」」
 一番この場に居てほしくない人物の声が聞こえた。それは誰もの心臓が嫌に高鳴らせ驚きの表情を作ったのだが、その中でも一番ダイゴが戸惑いの表情を浮かべた。
「あれ?皆お揃いでどうしたの?」
 そしてもう一人、予期せぬ青の人物の到来にデンジたちは更に複雑な色を生んだ。混沌は、更に大きくなることが予想された。