39.繋がらない心

「はああぁ!!?マグマ団と戦ったァ!?」
 とあるカフェにて、彼の怒声が響き渡る。
「何しちゃってんのマコト!も〜〜〜君はどうして自分から危険なところに行くのかなぁ!?」
 ダンダン!!――彼・ダイゴは珍しく声を荒立てて机を叩く。他の客が彼を訝し気に見ているが、そんなことは今のダイゴにはどうでもよかった。彼が今一番心配しているのはマコトの身である。
「それで、今どこに居るの?」
《教えませんよー。教えたらダイゴさん、来るでしょ?》
「当たり前だよ!」
 だから教えて!とダイゴは促すがマコトは頑なに喋ろうとしない。
「はぁ………マコト、取り敢えず、無事なんだね?」
《ハイ》
「そ…なら良いんだけど…」
《…まあ、お手数ですがもし何かあったら助けに来てください》
 ピタリと、ダイゴの動きが止まる。「おお止まった…」と客が呟いた。「え…ど、どういう心境の変化?」ほんの少し紅潮して、ダイゴは訊ねる。こんなことを頼まれたのは初めてだ。動揺と共に嬉しさが内から湧き上がる。
《は?ポケモンに無茶させるわけにはいかないじゃないですかー》
「………あ、そっちかうんそうだよね分かってたよ」
 そう、彼女がそう簡単に人を頼るわけがないのである。ダイゴはがっくりとうなだれた。それから少し彼女と話をしてからダイゴは端末を切る。結局マコトの居場所も分からず終いなのでかなりへこんだ。そんな折、ふと頭上でくすくすと笑い声が聞こえた。
「相変わらずマコトちゃんに振り回されているようだね」
「ミクリ!?」
 優雅に微笑むミクリに驚く。「どうしてここに?」と訊いたところだだの暇潰しと返ってきた。
 ミクリはソファに座るとウエイトレスにコーヒーを頼んだ。それからまたニヤリと笑うと、ダイゴをじろじろと見つめる。
「ふふふ。マコトちゃん、何て?」
「……自分で何とかできるからダイゴさんは心配しなくていいって」
「マコトちゃんらしい」
「まったくだよ。きっと今頃、厄介事に巻き込まれてるんじゃないかと思うと…あああ…」
 もし流星の滝のようなことが彼女の身に起きてしまったら、と考えるだけで体が震える。助けに行きたい。今すぐ駆けつけたい。だがマコトがどこに居るかも分からないこの状況で無闇に動いてしまうのは得策ではない。
 ―――そんな中、カフェに設置されてあるテレビからレポーターが興味深いことを述べていた。
《カイナシティの船着場前です。こちらにてマグマ団と名乗る一団が潜水艇を奪い、逃走しました!詳しい理由などは判明していませんが……》
「……ねえ、私が思ったことを言っても良いかい?」
「……言わなくて良いよ」
「……もしかしなくてもマコトちゃん、これに関わったり…」
「言わなくて良いってば!」
 ダン!もう一度、強く机を叩くダイゴ。
「ダイゴ、トクサネシティの家に一度帰ったらどうだい?」
「え…どうして?」
「頭を冷やす為だよ。多分ここに居たら君、すごく迷惑だから」
 サラッと酷いことを言うミクリにがっくりくるが、言われてみれば確かに他の客は時折こちらを不審そうに窺っている。「家に居るから用事が終われば来てってマコトちゃんに連絡を入れればいいさ」彼の提案にダイゴはしぶしぶ頷く。
「来てくれるかな、マコト」
「君の為に言っておくけどマコトちゃんみたいなタイプはさ、束縛されるの嫌いだと思うよ。君の心配性も程々にね」
「…分かったよ」
 彼の言いたいことは理解できたが、納得はしていなかった。やはり心配なものは心配なのである。
 ダイゴはマコトにメールを送ると伝票を持って立ち上がる。ためになるかどうかは分からなかったが、アドバイスしてくれたミクリにささやかなお礼だというように、支払いは任せろと言った。彼女を信じるしかない。危険に近づく性もマコトの一部なのだと言い聞かせて、ダイゴは空元気で笑ってみせた。