48.手を繋ごう

 ルカリオは眼前にそびえるグラードンについ息を呑んだ。眼前のポケモンは今までにないタイプのポケモンだ。それは単なる相性的なタイプという意味でなく、神聖さとか現状だとか、そういう総ての意味を込めて、タイプが違った。だがそれだけだ。その自分とは違う体格と熱風に驚いただけで、不思議と敗北の二文字を思い浮かべることはなかった。先程から背後に感じる己の主の視線に気づきながら、ルカリオは波導を高める。
「…ルカリオ…」
 変わりつつあるマスターの情けない声に、ルカリオは一鳴きして慰める。信じてくれたから、ここに出させてくれたのだろう?その想いに報いるつもりだ。
 自分はかくとう、はがねタイプで、グラードンはじめんタイプ。本来なら自分は不利だ。なのにそれが分かっていても尚、マコトは自分を選択した。その選択の意味は、今までにないくらい貴重なものだ。きっと彼女は気づいてないのだろうが、その意味をルカリオは分かっているつもりだった。
「ルカリオ、来ます!」
 振り払うような声音にルカリオは反応する。攻撃力やタイプで劣っているのなら、己の脚でそれをカバーするしかない。グラードンの攻撃をなんとしても避けねばならなかった。
 重く、鋭い攻撃を避けつつも彼女に気を配る。これで彼女に攻撃が当たってしまったら元も子もない。
「左に避けて!」
「!」
 単に“避けて”と指示するより“左”など限定して指示すれば体は反応しやすい。それはマコトが旅をし始めてすぐに気づいたことだった。
 不意に地面がカタカタと揺らぐ。(まずい…)それはルカリオだけでなくマコトも思った。これは“じしん”だ。避けきれない、咄嗟に考えた。ゴゴゴゴゴ…!!平衡感覚が失いかけるほどの威力。だがここで膝をつくわけにはいかない。耐えなければいけない、絶対に。気力で“じしん”を乗り切りルカリオは息を吐く。と、その時、不意に頭上から岩が降ってきた。…これは技ではない、先の攻撃の影響でこの空間にひび割れが発生したのだ。頭上の岩に気をつけながらグラードンを見ると、彼のところも落石していてこちらに目を向けていなかった。
「ルカリオ!!」
 こちらに駆け寄ってくるマコトに少し微笑む――――が、笑みは凍りついた。
 彼女の頭上、大きな岩が降ってきているではないか。それに気づいたマコトはすぐに足を止めてなんとか避けるが、やはりそこは人間。全てを避けきれない。他とは倍違う大きさの岩が彼女目掛けて降ってくる。
「……っ!!」
「グゥ、ウ――ッ!!」
 (駄目、マスター!!)届け、と手を伸ばす。死なせない、護ってみせる。
 パアッと眩い光がルカリオとマコトを…否、正確にはルカリオの腕につけているメガストーンと彼女のポケットの中にあるキーストーンが発光している。気づいた時にはルカリオはマコトを横抱きしていた。