ときめきミッドナイト



きらめく夜の窓辺。
淡いピンクのネグリジェをまとった少女の手は、可愛らしいマグカップに添えられている。シトロンの紅茶、パステルのマカロン、カラフルなパジャマを着た少年たち。おとぎ話のようなスイートルームの中で交わされている会話に、星たちもそっと耳を傾けている。
「なあ紫龍、その丸いやつなに?」
「龍髭糖といって、龍の髭を模した飴だ」
へー、と興味深げに身を乗り出した星矢は「何でできてんの?」と尋ねる。
「外側は蜂蜜ともち米、中身はピーナッツが入っている。食べてみるといい」
差し出されたそれを彼はためらいなく口に放り込んだ。
「!うまっ」
「今夜パジャマパーティーをすると言ったら老師がわざわざ取り寄せてくださったんだ。アテナもどうぞ」
「ありがとう紫龍。繭みたいね、とても可愛らしいわ」
大切そうに受け取った沙織はそっと光にかざす。
「手の熱で溶けちまわないか?早く食べたほうがいいと思うけど」
星矢にそう言われて彼女は「そうね、いただきます」と上品に口元に運ぶ。なまえがクッションを抱いてその姿を見つめていると、瞬が身を寄せてささやいた。
「なまえさん、あんまり見つめていると穴が開いちゃうよ」「え?あ・・・あんまり沙織ちゃんが綺麗で、つい」
沙織は「あら」と微笑む。
「なまえさんこととっても可愛らしいわ」
「いや、私は・・・みんなよりも年上だし、なんかここにいるのがとにかくいたたまれないです・・・」
「そんなことおっしゃらないで。だってなまえさん、いつもは黄金聖闘士たちに取られてしまうんだもの」
彼らと過ごす時間はアルコールが入ることも多い。そんな場に未成年の彼らを連れて行くのは気が引ける。
「それは、成り行きというか・・・」
「だから今日は私にあなたの時間をくださいな。ね、そうお約束して下さったわ」
そう言いながら、沙織はなまえの胸元にピンクのマニキュアが塗られた指を伸ばし、解けかけたリボンを直す。
「あ・・・」
「ふふ、いけないわ。男の子の目があるんですもの」
なんとなく、見てはいけないものを見ているような気がして星矢たちは目をそらす。
「はい、できました」
「ありがとう・・・」
なんだか顔が熱いのは気のせいだろうか。
「・・・ていうかなまえさん、聖域にいて大丈夫なのか?」
「え?」
「そりゃみんな気持ちの良いヤツらだけどさ、なんていうか心配なんだよなー」
うんうんと氷河たちも頷く。
「なまえさん、たまに隙があるから・・・」
「す、隙・・・!?」
瞬の言葉になまえはショックを受ける。沙織は「させませんよ」ときっぱりと言った。
「なまえさんを不埒な輩の手に落とすなど許しません。絶対に」
「不埒な輩って、仮にも黄金聖闘士だぜ沙織さん・・・」
「あ、じゃあさ。誰だったらなまえさんにぴったりの相手だと思う?」
「瞬くん、」
「大丈夫、もしもの話。無理やりくっつけようなんて思っていないから安心して」
すると星矢が「オレは絶対にアイオロス!」と言った。
「男らしいし頼りがいがあるし。しかもマッチョだぜ、どう?なまえさん」
「みんなマッチョだよ星矢」
アフロディーテでさえ体脂肪率はかなり低い。黄金聖闘士たちの体は出来上がっている。
「待て星矢。それなら我が師カミュが一番だ。なまえさん」
「は、はい」
「絶対零度のクールな冷静さと情熱さをあわせ持つ懐の広い男だ。シベリアで生き抜く実力もある、それにボルシチが美味い。どうだろうか」
突然始まったプレゼンに開いた口が塞がらない。
「ボルシチはたしかに美味しいね・・・」
「そうだろう」
紫龍は?と瞬は尋ねる。
「・・・迷っている」
「え?」
「海のように深い愛情と山のように高い志を持ち、大地のごとくすべてを受け止めることができる器の大きい老師。冷静沈着でありながら、すべてを投げうつ覚悟を持つ情熱的で男らしいシュラ。
「選べない・・・俺には、とても・・・!」
「あ、うん、無理にとは言わないけどさ・・・」
「じゃあさ、瞬は誰が良いんだ?」
星矢に聞かれた彼は「えー・・・」となぜだか渋い顔をした。
「シャカはいい人だけどちょっと・・・アフロディーテも、うーん・・・なまえさんにはどうかなあと思って」
「あー・・・」
微妙な空気を感じ取ったなまえは「でもね!」とフォローする。
「アフロディーテはデスクワークで困っているといつも気が付いて助けてくれるし、お茶にも誘ってくれるし気分転換にも付き合ってくれるよ。シャカは話していると面白いし、料理も手伝ってくれるしそれに、」
星矢たちの視線にはっとする。
「なまえさん、もしかしてどっちか好きなの?」
「ちが、星矢くん!」
沙織は「いいのよ」ところころ笑う。
「なまえさんが本当に好きになって選んだ方なら誰だって。そんな相手がいっらしゃるならお会いしてみたいわ」
年下はありなの?と瞬は無邪気に問う。
「年下かあ・・・どうかなあ、あんまり考えたことなかったけど」
「じゃあ考えてみてよ。ね」
「おい瞬、」
「ん?なに氷河?」
いや、と彼は口ごもる。
「あらあら、いいわね。でもやっぱりだめよ」
沙織はなまえをぎゅっ!と抱きしめて言った。
「もうしばらくは誰にもあげませんからね」
「かなわねえなあ、沙織お嬢さんには」
にぎやかな会話は終わることなく、楽しい夜は更けていく。


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