あなたとルナティック番外編 2
「えーっお肉ってこんなに高いの?」
歯に衣着せぬ言い方に「フィッシュさん、しーッ!」と小突く。
「ブランド牛なんだからいに決まってるでしょッ」
「あ、そうなの?」
そう言いつつ彼はがばがばとカゴに放り込んでいく。
「そんなに食べきれるんですか?」
「健啖家が2人もいるんだから、いっぱい買っとかないと僕たちの分がなくなっちゃうわよ」
肉のパックであふれたカートを押す彼に「お野菜って何がいるんだっけ」と尋ねられ、
「ネギとか・・・白菜とか?個人的にはニンジンあんまりいらないかなって思うんですけど」
「あー分かるわあ、僕はシイタケいらないかも。代わりにマイタケ買おっと」
「あっそれおいしそう」
「でしょー?僕って天才だわ」
うーんとフィッシュさんは考え込む。
「たぶんタイガーはネギいやって言うのよね・・・」
「えーっすき焼きなのに?」
「とにかくダメなのよね、お腹壊しちゃうのよ。かわりに水菜にしときましょ」
「ホークス・アイさんは?」
「とくに好き嫌いはないけど、鶏肉はあんまり食べないかな」
美女が焼き豆腐をカゴに入れる姿に売り場の男たちの目が釘付けになっている。
「焼き豆腐でこれだもんなあ・・・」
「なんのこと?」
「フィッシュさんのこと、みんな見てるから」
ああ、と彼は合点がいったように笑う。
「たまに追っかけてくるのよ」
「そうなんですか!」
「そうそう、連絡先ほしいとかしつこくて参るわあ」
「そういう時ってどうしてるんですか?」
「怒んないでよ、ほんとはあんま良くないんだから・・・テキトーな番号教えて逃げちゃう」
「ええ、その場しのぎ・・・」
「いーのよ別に。勤務時間外は関わり持たない主義なの」
その勤務時間外に私をすき焼きパーティーに誘ってくれるのだから嬉しい。
会計を済ませて外へ出ると、とんでもないイケメンが遠巻きに囲まれていた。
「うげ・・・タイガー」
「あ、来た」
おっそいわよ二人とも、と真っ白な毛皮のコートを靡かせ颯爽とこちらへやって来るタイガーさんを「なんでいるのよ?」とフィッシュさんはジト目で見上げる。
「荷物持ちが必要かと思って迎えに来てあげたのよ、感謝なさい」
「気持ちはありがたいけど、ちゃんと人目のない場所でワープホール使って帰るつもりだったわよ」
「アンタ目立つから囲まれてるんじゃないかと思ってさ」
「とか言って自分こそそんなコート着てきて目立ってるじゃないの」
「コートなんかなくたって、僕はいつだってオーラがあるから人目を引いちゃうのよね・・・
」出たわ、とフィッシュさんはうんざりしたように肩をすくめた。
「かーえろ、なまえ」
「えっ、ハイ」
「ちょっと、なに距離取ってんのよ」
だってものすごく目立ってるから・・・。目が眩むような美女(美男子)と宝石のような美青年に馴れ馴れしく絡む勇気はない。
「ほら、行くわよ」
フィッシュさんが私の手から買い物袋を奪って手を繋ぐ。
「あ、持ちます」
「いーの、これはタイガーが持つから」
「ちょっと、」
「なによ、そのつもりで来たんでしょ?」
「まあそーね・・・」
しぶしぶビニール袋を持った彼は、たっぷりのお肉に目を輝かせる。
「食べるの楽しみだわあ」
おネギ抜きなんですよ、と言うと「分かってるじゃないの」とクシャクシャ頭を撫でられる。
「ついでにシイタケもね」
「それはどっちでもいいけど。そういえばホークス・アイが昆布から出汁取ってたわよ」
なんだか全部が楽しくて嬉しい。こんなバイト生活がずっと続けばいいのにな。
「私、就職もデッドムーンサーカスにしようかなあ」
「やめといたほうがいいわよ、あんなとこ」
「そうですか?」
「そうそ、それよりいつか僕が一流のロックアーティストになったらマネージャーになんなさいよ」
「だめよ、僕が一流の玉乗りになったら一緒に来てもらうんだから」
「アンタもうなってんじゃないの」
「・・・最ッ低!」
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