ss:シガーはシガレットケースに(魚)



あなたのことは好きですが、恋人というほどではありません。
「・・・は?」
「このあいだミーノスに告白した時のお返事」
シガーに火を点けようとしていたアフロディーテはぽろりとそれを落とす。  
「・・・告白したのか?ミーノスに?」
「うん」
「・・・・・・なぜ?」
なぜと聞かれて答えに詰まる。
「好き、だったので・・・」
「そう・・・いや、そうか・・・」
あっけにとられている友人が何かを言う前に口を開く。
「ダメ元だったし、もう諦めはついてるつもりだけど気まずくなっちゃったと思っただけ。・・・変なこと言ってごめん。忘れて」
しかしアフロディーテは「最低な返事だな」と吐き捨てた。
「ゼロだったあの男への評価が一気にマイナスになった。なまえ、見たまえ」
これが君だ、と彼は新しいシガーを挟んだ指先を動かす。
「気が向いた時だけ吸う、気分転換を兼ねて。・・・意味が分かる?」
「・・・火遊びの相手にもならないってこと?」
彼はシガーの先に火を点けると、二口ほど味わってから消し潰す。
「君がこうなる姿を見たくはない」
反論しようとしてやめる。望まなくてもそうなることなど決してないのだろう。
「私にしないか」
「・・・冗談ならひどいと思う」
すると意外にも彼は頭を抱え「はあー・・・」と大きなため息をついた。
「冗談なら私はミーノスよりクソだろ・・・」
「確かに」
「ずっと前からなまえが好きだよ。こんなタイミングで言うつもりなどなかった。あとミーノスは絶対に許さん」
突然の告白に頭が真っ白になる。
「え・・・え?好きって?」
「なまえが好きだ。ずっと前から愛している。聞かなかったことにするか?」
答えられないままでいると、彼は「今すぐ返事をくれとは言わない」と続ける。
「でも、考えてくれないか」
新しいシガーに火を点ける。そして、
「私なら、君が燃え尽きるまで離さない」
と美しく笑った。


- 27 -