never say never.


C判定の模試の結果を入れた鞄がいつもより重たく感じてしまう。
「(もうだめかもしれないな・・・)」
時計を見れば、夕飯の時間などとっくに過ぎている。またひとりで食べながら単語帳とにらめっこしなければならないと思うと憂鬱になった。
放課後は毎日のように予備校に通い、土日は補講。目が回るような日々は終わらない。
ぼんやりとバスを待つ間に、濃紺の冬空が満ち始めていた。ため息が白く染まり、冷たい空気の中に溶けていく。
「ねえ」
「!」
あっと声を上げそうになった。スリーライツの夜天光が立っている。あまりにも出席日数が少ないためクラスメイトであることを信じ切れていなかった相手に話しかけられてしまった。
「死にそうな顔してるけど、大丈夫?」
「えっ、あの・・・大丈夫です」
そ、と彼は言った。それだけ。続かない会話。
「(き、気まずい・・・)」
話しかけてもいいのか分からず、ちらりと横目で眺める。すると遠くからバスのライトがやって来るのが見えた。
「テストさ」
「えっ」
「だるいよね」
「あ、うん・・・点数とかも微妙、だったし・・・」
ふーん、と夜天くんは呟く。
「だから元気ないんだ」
自分なりに頑張っているのに伸び悩む結果。みんな頑張っているんだから私はもっと頑張らないといけない、のに。
「志望先、高望みしてるんじゃないの?」
「うん、そう、かも」
「・・・っ暗い!」
えっ、と驚いた私の前にズイと差し出される握られた手。
「あげる。あと、落ちたって死ぬわけじゃないんだからね」
バスが停まる。あわてて受け取ると、夜天くんはさっさと乗り込んで一番後ろの席に座ってしまった。
私は運転席の後ろに腰を下ろして手のひらを開く。白い包み紙にくるまれたキャンディ。舌の上に乗せると、優しい甘さがほろほろと溶けていく。
揺れる街並みを眺めながら味わっていると、ふと、包み紙に文字が印刷されていることに気がついた。

”never say never.(あきらめるな。)”

受験シーズンに乗っかったお菓子メーカーの偶然の一言が、疲れた気持ちにじんわり沁みる。
「(・・・がんばろ)」
その薄い紙を捨ててしまうのはなんだかもったいなくて、お守りみたいにパスケースにしまったのは内緒だ。


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