ss(日和と郁弥)


「日和、おまたせ」
カフェの窓際でぼんやり外を眺めていた僕は「おつかれ郁弥」と答えた。
「なんにする?」
メニューを手渡して尋ねる。
「どうしようかな・・・」
思案している郁弥の隣でちら、と窓の外に目をやった。
「カフェオレにする」
店員にオーダーした彼は「なに見てるの」と尋ねる。
「別に、なんでもないよ」
「あの子たち知り合い?」
ここから見える位置で楽しそうに会話をしている女の子たちの姿のことを指しているのだ。
「知り合いじゃないけど」
「もしかして日和、誰か好みの子でもいた?」
口元にかすかな笑みを浮かべる郁弥に僕は「いないよ」と答える。
「ごまかさなくてもいいのに」
「ごまかしてなんか・・・郁弥こそどうなの」
すると以外にも、
「・・・僕は手前の子かな」

と返ってきた。
「へえ、そうなんだ」
「笑った顔が可愛いと思う」
たしかにそうかもしれない。そしてこんな会話をするとは、と不思議な気持ちにもなる。
「郁弥、彼女作らないの」
「別に、今はいいかな」
「そっか」

日和は、と彼は言った。
「(そりゃ同じこと聞くよな)」
僕もいらないよ、と答える。
「郁弥と一緒にいるほうが楽しいから」
「そうなんだ」
あっさりした返事。だけどいつものことだ。
「いつかできたら教えてね」
「・・・できたらね」


- 37 -