東堂
”おかけになった電話をお呼びしましたが、お出になりません”
通算3回目の機械音声。だがこんなことは巻ちゃんが日本にいる時からのことなのですっかり慣れてしまっている。
めげずに4回目のコールをする。するとしばらくして、
”だあァッもうッ、うるッせえショ東堂ォ!”
「おっ、巻ちゃん!ようやく出てくれたな」
”ようやくも何もオメーがしつけえからッショ!電源切ろうにも打ち合わせの連絡があるからそれもできねェしよォ”
「打ち合わせ?なんのだ?」
”兄貴の仕事関係、一応手伝わせてもらってるからな”
「すごいな巻ちゃん、もう仕事をやっているのか」
”学生だからがっつりってワケじゃねーけど。んで?何の用”
「あ、えーとだな・・・」
”言っとくけどくだンねー話なら切るショ”
「いやっくだらなくはないのだが!ただ、あー・・・」
恋愛相談というのは巻ちゃんの中でくだらない部類に入るのだろうか・・・?
「その、実は相談したいことがあって」
”相談?適役ならたくさんいるだろ”
「オレの適役とは巻ちゃんなのだよ」
”・・・そうかよ”
言ってみ、と彼はうながす。
「いいのか?」
”まー息抜きに聞くだけ聞いてやるショ”
「ホントか!実は、だな・・・みょうじさんのことを好きになってしまったのだがどうしたらいいと思う?」
”・・・はァ?”
しばらくの無言の後「なんで?」と巻ちゃんは言った。
”そんなに接点あったか?”
「あったとも!ほら、オレたちが大会に出た時、彼女は応援席にいただろう」
”あーまあ、いたな”
「それから、オレが巻ちゃんに会いに行った時も隣にいたし!巻ちゃんの!」
そうだったかねェ、と巻ちゃんは呟く。
「明るくていい子だよな!」
”まーな”
「可愛いし、よく笑うし、性格もいいと思うのだが」
”まーそうかもしんねェなァ、・・・”
「どうした巻ちゃん?」
”ん?ああ悪りィ、ちょっとメール返してた”
「忙しいのか?かけ直したほうがいいか」
”そっちのがめんどくせーからこのまま話すショ。エート、つまりみょうじと付き合いたいんだな?”
突然の問いに思わず「いやッそんな大それたことは」と叫ぶ。
”ハァ?”
「まずは友だちからというか、親睦を深めたいというか・・・」
はあ、と呆れたような声が返ってくる。
「知り合い止まりの現状をなんとかしたい。それで巻ちゃんの知恵を借りたいというわけだ」
”というわけだ、じゃねーショ。つか、なん・・・ハアー・・・”
「幸せが逃げるぞ」
”余計なお世話ショ。実はこっち来てからもアイツとたまに連絡取ってんだけどよ・・・好きなヤツいるらしいぜ”
「んなッ!?それは本当なのか巻ちゃん!」
”ホント”
「ウソだろ、終わった・・・」
さらばオレの淡い恋。すると「だーッから!」と巻ちゃんは言った。
”連絡先やっから後は自分でやれショ”
「でもみょうじさんは好きな人がいるんだろ?」
”あーそのあたりは口止めされてっからなァ・・・じゃあ奪え”
「はッ!?奪う!?」
”オメーならやれるぜ、頑張れよ東堂。んじゃな”
無情に切れた電話。ツーツーツーとうるさい音を聞きながら、
「意味が分からないぞ巻ちゃん・・・」
とがくりと膝をつく。すると、メッセージの受信を知らせる音が聞こえた。
”みょうじのアドレス、いやなら向こうが拒否すんだろ。番号は自分で聞け”
みょうじさんの連絡先・・・!どっどっどっ、と心臓が跳ねる。
しかし好きな相手がいるのなら、オレの気持ちは迷惑なのではないだろうか。けれど、このまま引き下がりたくはないのも本当だ。
何もしないまま後悔はしたくない。
「・・・よし」
覚悟を決めた。イギリスから見守っていてくれ巻ちゃん!
***
「なんか悪寒が・・・」
面倒だよなァと呟く。なんでオレがこんなこと。
両方から同じ相談される身にもなれっつの。
「(こうなったらさっさとくっついてもらうしかねぇショ・・・)」
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