手嶋
みょうじ先輩ってなんか見ていて飽きない。本人には言わないけど、かなり面白い人だと思う。時々ちょっと挙動不審だし。
彼女がドリンクが入ったカゴを持ち上げたのを見て声をかけた。
「それオレが持ってきましょうか」
「はッ!?あ、うッ!」
どすっという音と共に見事に足の甲を直撃した重いカゴ。
「うわ・・・大丈夫すか?」
「だっ・・・いじょうぶ、びっくりしただけ」
苦笑いする彼女に、
「一年の分ですよね?オレがやっとくんで、先輩は休んでてください」
「え、でも」
「足、どっかケガしてると悪いし」
そう言い残してドリンクを抱え校門に向かう。
「お、」
ちょうどいいタイミングで戻ってきた小野田たちにテキトーにドリンクを渡した。
「おつかれさん。ほい」
「おっ、おつかれさまです!」
「どうだ?タイムは縮まったか?」
「あ、聞いてきます!」
すぐにでも駆け出しそうな小野田の襟をつかんで引き留める。
「待った。そうあわてんなって、先に休憩してけよ」
「そうやで小野田くん、ティータイムや」
鳴子は「あ、てか今日はこれくれんのパーマ先輩なんすね」と首を傾げた。
「あー、さっきちょっとな」
先輩の名誉のために足を負傷したことは言わないでおく。すると今泉が言った。
「もしかしていじめたんすか」
「イジメねえよ!」
っとにムカつくエリートだな・・・。
「悪かったな、かわいい先輩からドリンクもらえなくて」
「誰もそんなこと言ってませんけど」
「スカシは先輩のこと好きやもんなあ」
「エッ!?」
鳴子の言葉にオレは固まる。
「そうなのか?」
「好きですよ、いい人なんで」
「へ、へー・・・そなんだ」
コイツ人前で好きとか平気で言えちまうタイプなのか?こわ・・・オレが軽く引いていると、鳴子と今泉はなぜか目くばせを交わした。
「ワイも好きっすよ」
「お、おお、そっか」
「パーマ先輩も好きやろ?」
オイオイオイなんだよこの展開。
「ま、まあ?そりゃな」
「フーンへーほおー」
ニヤニヤする鳴子は突然「あ、マネージャーさんや!」と指さした。
「えっ」
パタパタと走ってこちらにやって来る先輩の姿を見て動揺する。
「手嶋くんさっきはごめん!」
「いやっ全然!てかそんな走って大丈夫なんですか?」
「うん、もう平気」
「大丈夫って、なんかあったんすか?」
鳴子の問いに先輩は苦笑いをしながら「ドリンクのカゴ足の上に落としちゃって・・・」と答えた。
「うわあ、痛いですねそれ・・・」
顔をしかめる小野田と鳴子、呆れた表情の今泉。
「なんでそんなことに?」
「なんかボンヤリしててつい」
「気ィ付けてくださいよホンマに。ワイら先輩のことめっちゃ好きなんやから、スカシも小野田くんも」
なあ?と言われ今泉は「まあ」とそっけなく、小野田は「ハイッ」と元気よく頷く。
「え?ええーありがとう、なんか照れるね」
本当に照れ照れしている。なんか可愛い。
「そいやパーマ先輩、さっきマネージャーさんのことかわいいって言うてました」
「はッ!?」
思わず声が出た。今さらそれを拾うな。
びっくりした顔の先輩、ニヤニヤしている鳴子。コイツはめやがったな・・・。
だから言った。
「本当にそう思ってるんで」
本心だった。先輩を見かけると自然と目で追ってしまう自分がいることも、とっくに気付いていた。
「あ、えっ?」
「それじゃ、オレまだやることあるんで」
我ながらわざとらしい逃げ方だな。
「(あークソ、顔あつ・・・)」たぶん好きになりかけだったんだと思う。それが思いもよらない形で自覚させられたもんだから、余計にオレの中で変な感じになっている。
ざっざっ、ムダに早くなる足音。
「おっ手嶋」
「ハイッ!」
「うお、やけに元気だな」
一本どうだ?と田所さんから持ち掛けられた勝負。持て余している熱を振り切るべく、
「やります!」
と返事をした。
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