場地と限界腐女子の姉、そして千冬


「ぜーったいこの2人は付き合ってる!いや私の頭の中でだけなんだけど!でも妄想するのは自由だから許してほしい・・・」
「ハア・・・」
ボリボリお腹を掻きながら圭介は首を傾げている。
「つうかこのマンガそんな設定あったか?」
「だから、ぜんぶ私の妄想だって・・・そうだよね、ワケわかんないこと言ってごめん」
「いや、謝られてもな・・・」
「でも夢を見るのは自由だと思うから・・・」
「よく分かんねえけど、そういうの外ではあんま言わねーほうがいいんじゃね?」
「言えないよ!だから圭介だけに語ってるの」
「まあペヤングくれるからなんでもいーけどよ」

***
場地さんのお姉さんが好きだ。きれいで、笑うと場地さんにちょっとだけ似ていて、気さくで優しい。休みの日に時々作ってくれる昼メシはめちゃくちゃ美味いし、ペケとも仲が良い。
オレと場地さんが勉強している隣の部屋から「ほらほら〜ペケちゃんこっち!」と遊ぶ声が聞こえるとなんだかソワソワしちまう。
「(マジでなまえさんと付き合いてーな・・・)」
そんなことを思いながら勝手に入ってこいと言われている場地さんちの玄関を開けた時だった。なまえさんの声がする。
「こんなに好きになったのは初めてなの・・・お互いにやっと出会えたかけがえのない大切な存在だって感じてる」
「無理だろ、だって女いんじゃんコイツ」
「分かってる、彼女がいるのもちゃんと知ってるよ。でも、それでも・・・形だけでもいいから結婚してくれないかなあ」
「無茶言うなや」
結婚・・・!?
「ばッ、」
「おー千冬来たんか」
びっくりした顔のなまえさんと目が合った。
「あ、ち、ふゆくんこんにちは」
「ちわす」
「あの、私向こうにいるね」
なまえさんは場地さんに何事かを囁き「ゆっくりしてってね」と笑顔を見せてキッチンへ出て行った。
「もし千冬くんに変なこと言ったら、アンタのペヤングにタバスコぶち込む」
「い、言わねーよ・・・」
ゆっくりしてってね、と言い残したなまえの背中、本気だ。オレが下手すればラス1のペヤングが死ぬ。
「場地さん、あの」
「ん?おう」
「なまえさん、もしかして好きなヤツとかいるんですか・・・?」
「ア?知らねえけど」
「でも、今なんかそんな感じの話してましたよね」
「アー・・・さあ・・・」
目をそらして言葉を濁す。
「あんま聞こえんかったワ・・・」
場地さん!と千冬は身を乗り出した。
「オレ、本気なんです!本気でなまえさんのこと好きで・・・だからなんか知ってたら教えてもらえないすか」
「千冬、オマエ・・・」
なまえーーー!!!と心の中で叫んだ。
オマエのせいで千冬が盛大に誤解してんぞ!けどペヤングが人質に取られている以上オレの口からはなんも言えねえ・・・
「アー・・・あのな千冬」
「はいっ」
「なまえは、エート、よく分かんねーけど大人っぽいしツラも悪くねえと思う」
「うす、めっちゃ美人っす」
「でも、なんつーかの、シュミが、だな・・・あんま人に言えねーつうか」
「それは・・・相手がいる人を好きになっちまうくらいですもんね」
「ア?相手?」
「女いるってさっき言ってたの聞こえました。それでも結婚したいってよっぽどなんすね・・・」
「いや、それはアイツのことじゃねんだわ」
「え?どういうことですか?」
「壁とか天井になって2人を見守りたいとかなんとか、よく覚えてねーけど」
「それ・・・もしかしてカップルを応援してるってことですか?」
「いや、付き合ってねえ。ソイツには女がいて、」
「エッ二股!?最悪じゃねーか」
「いやだから、」
携帯にメッセージが来る。

“いいかげん話題変えろ”

「今日ペケは?」
「留守番させてます」
「んだよ、連れてくりゃいいのによ」
「爪切ってないんすよ。壁紙傷つけたら悪ィからと思って」
「気にしねえのに」
「一応ここ賃貸なんで」
その、と千冬は口ごもる。
「さっきの話なんすけど、」
「虎とライオンどっちのが強えかってヤツ?」
「違いますよ!そんな話してましたっけ!?」
「さあ」
「・・・つかソイツ、まさかなまえさんにも手ェ出してるとかじゃねえっすよね?」
「それはねえな」
「なんで言い切れるんすか」
「むしろなまえのが触りてえっつってっけど、さすがにどう頑張っても無理だな」
「さわっ…!?」
ブブ、と携帯が鳴る。

“いいかげんにしろ”

ペヤングとタバスコを掲げているなまえが睨んでいる。
「とにかく!ぜってー大丈夫だから!!」
「えーでも、」
「オレが信じらんねえってのか!?」
「しっ、信じます・・・!」


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