「なまえ〜!テストどうだった?」
「……終わった」
「え?」
本気で終わった。おそらく赤点教科が2、いや3。ある。
「とりあえずさ、ドーナツ食べいこ!気晴らしに」
「うん。行く」
こうなったらヤケ食いしてやる。今回のテスト、本気の本気で勝之は協力してくれなかった。多分こっそり寝てたのがバレた。テスト前にラインしたら『お前なめてんの?』『甘えるな』と一蹴された。相変わらず鬼だ。
「あ、なまえ見て。掲示板なんか貼ってる」
「ん?」
友人にちょんちょんと肩を突かれて見てみれば、またしても私をどん底に突き落とす文面が書かれていた。
「ほ、補習……!?」
「うわあ、文化祭終わってから毎週土曜日だって」
しかも赤点取った人強制参加らしいよ。友人は困ったようにこちらを見つめた。毎週土曜日て。やばいでしょそれ。しんどいし、夕方からのバイト削らないと駄目じゃんか。
「あ」
友人が何かに気づいて声を出したので、なんだと垂れていた頭を上げてみる。
「勝之じゃん」
「お前、補習受けるの」
「うん……。イヤだけど強制参加らしいし」
強制参加?と呟くのでそう書かれた部分を指差して教えてあげる。すると勝之の目が一瞬にして馬鹿を見る目に変わった。
「もうすでに赤点あるの」
「うん」
「何個」
「2か3」
はあと盛大にため息をつかれた。いやこっちがつきたい。今なら泣けと言われたらすぐ泣ける。
「なまえ、ちょっと私トイレ行ってくるね」
「うん」
ポツンと掲示板前に勝之と2人残される。
「まあ自業自得だな」
「厳しいなあ……」
「俺以外でも勉強教えてくれる奴は居ただろ」
確かに。勝之よりも頭のいい子はたくさんいる。それでも特に行動しなかった理由は、最終的には何とかなるだろうという甘い考えがあったからだ。自業自得、まさに私にぴったりの言葉だった。
「勝之も一緒に受けたりは……?」
「ないでしょ」
「だよね」
「試合あるし」
「ふーん」
そういえばこの時期は大会が近いんだっけ。だから毎年野球部は文化祭の準備もあまり参加しないし、その後の期末テストが終われば彼らは本格的に野球星人になる。
「……何」
「私、もうそろそろ試合観に行ってもいい?」
無言だ。勝之からの返事はない。
最後に試合を観に行ったのは、確か中1の頃だったかな。白球を必死になって追っかけてる勝之が、贔屓目なしに見ても格好良かったのを覚えている。これからもっといっぱい応援に行こうと思ったのにな。
「いきなり『もう来るな』なんて、流石の私もヘコんだよ」
「……それは、」
「別に失敗しても笑わないよ?負けて悔し泣きしても引かないし。どんな勝之も応援するよ」
「……は?」
「あれ、これが理由じゃないの??」
私はてっきり自分が失敗してるとこを見られたくないものだとばかり思っていた。勝之はプライドが高いし負けず嫌いだから。
「ええ何で無言で去るの!?」
「呆れた」
「じゃあ答え教えてよ!――うわっ」
スタスタと歩く勝之の背中を追いかけていれば、急に止まるので思わずぶつかってしまった。あ、リップ付いちゃった。
「その拙い脳みそで精々考えてみれば」
「十分考えたってば!」
「あとさっきのは正解じゃない」
「ええ!?」
そう言って勝之は再び足を進めた。今度はもう追いかけなかった。あれが正解じゃないのか。だったら何なんだろう。あ〜〜もうわからん。全っ然わからん!
「なまえ〜ごめん。遅くな、った……」
かきむしった髪が無造作に跳ねていて、友人はとてもびっくりしていた。
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