風呂上がりにカルロスと寮の食堂を訪れると、成宮が一年相手に何やら談笑していた。どうせ自慢話ばっかりだろう。
「一年の入浴時間とっくにきてるけど」
「あ!すみません」
一年数名はガタガタと椅子を直しながら慌てて食堂を後にする。成宮が「白河先輩こわ〜い」と茶化してくるが無視した。黙れ。
「なんかね!樹が運命的な出会いしたんだって」
「……は?」
「面白そうな話だな」
くだらない。何だそれ。運命的な出会い?バカじゃないの。
「朝練後1人でボール探してたら女子生徒が手伝ってくれたらしい」
「それが運命的な出会い?」
「このバンソーコーもくれたんだって。ほらこれ!」
「何でお前が持ってんの」
それ樹のなんでしょ。よくわからないが、成宮がムカつくぐらいの笑顔でヒラヒラと見せてくる。
「……ダサ」
仕方なく近寄って見てみれば驚くぐらいダサかった。男がこんなの使ったらいい笑い者だろ。これをあげる方も受け取る方もどうかしてる。
「――あ!やっぱり鳴さんが持ってたんですね!」
「うげっもうバレたの!?」
「返してくださいよ!」
「やだよ!お前いじれなくなんじゃん!」
「鳴さん!」
「やーだ!!」
「お前らうるせえ!何時だと思ってんだ」
「うっ」「ひっ」
馬鹿みたいに騒いでいる2人に、偶然通った原田先輩が一喝する。……助かる。俺やカルロスが言ったところで、樹はともかく成宮は黙らないから。
「お前らも止めろよ」
「すんません」
「……」
無言で頭をさげる。
「ったく。一年は早く風呂入ってこいよ」
「は、はい!失礼します」
「雅さんの声が一番デカかったけどね!」
「お前な、」
「何さ!」
樹は焦りながら食堂から出て行ったが、成宮は原田先輩に反抗していた。まあその様子はいつも通りだ。任せとこう。
ちらっとテーブルに視線を落とせば、例の絆創膏が忘れられたように置かれている。ふと手にとってもう一度見てみる。
「『やっぱダセー』って思ってるだろ」
「……まあ」
「どんな子だろうな。それ渡した子」
「どうせロクな奴じゃないでしょ」
こんなのもらって喜ぶ奴なんか女子小学生ぐらいだろ。……これ前も言った気がする。何だったか。
「それお前から返してやれよ。また鳴にでも渡ったら二度と返してもらえなそうだし」
「は?お前が返してやれば」
「さーて、部屋に戻ってストレッチでもするか」
「おい」
カルロスは俺の言葉を無視して食堂を後にした。チッと盛大に舌打ちをする。面倒くさい役目を押し付けられた。そのまま絆創膏をポケットにしまい、俺も食堂を後にした。
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