「あの、みょうじ先輩ですか?」
「そうですけど……」
いつも通り坂センにパシられたお昼休み。廊下を歩いていれば、見知らぬ女の子2人からお声がかかった。片方はもじもじしていて、もう片方はキリッとした女の子だ。
「あーえっと、何か用でも……?」
「先輩は、白河先輩とお付き合いされてるんですか?」
「えっ」
いきなり聞かれて、少しびっくりした。状況が読み込めなかったが、ちらっと横でモジモジしている子を見て、ああそういう事かと理解した。
「ううん。付き合ってないよ」
「……幼馴染なんですよね?」
「あ、知ってるんだ」
じゃあなんで聞いたんだと思った。
「ほら、みょうじ先輩も付き合ってないって言ってるでしょ」
「えっと、好きなの?かつ、……白河のこと」
彼女はコクリと頷いた。やっぱそうなんだ。やめといたほうがいいと思うけどなあ。勝之のどこを見て好きになったのか知らないけど、普通にあの人はオススメしない。
絶対面倒くさいよ。ねちっこいし潔癖だし口悪いし。なんて、”私勝之のことなら何でも知ってます”感が出てしまいそうだから、口にはしないけど。
「頑張ってね……?」
案外こういう繊細で純粋そうな女の子が勝之には合ってるのかもしれない。いいと思う、私は応援する。あれこれ協力するのは面倒だからイヤだけど。
「じゃあ私もう行くね」
「はい。すみません、ありがとうございました」
「いえいえ」
私はそのままその場を後にした。
# # #
「……何」
「いやあ」
「『いやあ』じゃなくて。うざい」
じーっと隣の席に座る男を観察していると、眉間にシワを寄せながらぎろりと睨まれた。
「勝之って、純粋な女の子好き?」
「は?」
「こう、守ってあげたくなるような女の子!好き?」
「それ聞いて何になるわけ」
「いやあ」
「その返事うざいからやめろ」
今日は一段と毒が飛んでくるな。かわすのに一苦労だ。
ぼんやり頭の中で勝之とさっきの女の子を並べてみる。悪くは無いと思う。ただお似合いかと言われれば、少し違和感はある。
「急に何」
「私にも色々あるの」
「あっそ」
素っ気ない返事の後に『お前の面倒事に俺を巻き込むなよ』なんて言われた。いやどっちかっていうと、私が巻き込まれた側なんだけどな。女子の世界は何かと難しい。勝之の扱いも何かと難しい。
「みょうじちゃん!今日の買い出し帰りにみんなで駅前のタピオカ飲みいこ〜って話になったよ」
「いいね!私あそこのショコラミルクティー飲みたかった!」
キャッキャと盛り上がっていれば横から冷たい視線を感じる。勝之は甘いものが好きじゃない。だから大の甘党である私に常々引いているのだ。
「ショコラミルクティー絶対美味しいよ?」
「どうでもいい」
「ホイップ増量したらさらに美味しくなるだろうなあ」
勝之の呆れ顔を無視して、私は鼻歌混じりに授業の準備を始めた。
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