お腹が痛い。非常に痛い。
「ううう……」
「顔色、悪いな」
朝からずっとこの調子だ。机に伏せながら、必死に痛みに耐える。原因はわかっている。月に一度の、あれだ。いつもはこんなに痛くならないのにな。
「勝之」
「何」
くるっと顔の向きを変えて、頭を机に預けながら勝之を見つめる。
「大丈夫?って言って」
「……は?」
「はやく」
何でもいいから労ってほしい。本当に何でもいいから。
「保健室行けば」
「動けない」
「薬飲めば」
「持ってない」
「……そう言う薬って誰かしら持ってるでしょ。貰ってくれば」
「ちょっと勝之貰ってきて」
「バカじゃないの」
くそう。お腹が痛い。また顔の向きを変えてううっと唸る。保健室か〜。行ってベッドで休ませてもらおうか。保健室なあ。保健室……?あ。
「勝之さあ」
「……何」
「”球技大会の日の保健室”って言葉に何か心当たりある?」
返事はない。私は今反対方向を向いているから、勝之がどんな表情をしてるのかはわからないけど、多分ポーカーフェイス気取りつつ内心焦ってると思う。
「何が言いたいわけ」
「それ私に言わせるの?」
また返事がない。きっとどう出ようか迷っているんだ。やばいなあ口元がニヤつく。
「……いつから気づいてた?」
「結構前からだよ」
「だったらもっと早くから言えよ」
むかつく、と勝之はボソっと呟いた。チッと舌打ちもされた。あれ、想像以上にご機嫌が斜めの方向に行ってるのかもしれない。一旦落ち着いてほしい。
「な、何もそう怒ることじゃなくない?」
「怒ってない」
「怒ってる人はみんなそう言う」
「黙れ」
ゆっくり頭を動かして、また勝之の方向を向く。ばっちり視線が交わって、ビクッと肩を揺らす。
「別にお見舞いぐらい変なことじゃないよ?」
「……」
「ね、寝顔じっくり見るのはあんまりいい趣味だとは思わないけど……」
徐々に小さくなる私の声に、勝之は眉を寄せた。
「……言いたいことそれだけ?」
「うん」
「本当に?」
「ええ?うん」
「……それ誰かから聞いたの」
「うん。保健室の先生から。私爆睡してたし」
私の返事を聞くや否や、勝之は再びチッと思いっきり舌打ちをした。いや何で?そしてはあっと、盛大にため息までつかれた。だから何で?
「あの、白河さーん?」
無視するな。そのまま勝之はゴソゴソと教科書やらノートやらを準備して、次の授業に備え始めた。え、この話もう終わるのか。もっといじるつもりだったのにな。
「――ッ」
今度は勝之がピクッと肩を揺らした。どうやら紙で左薬指の先を切ったみたいだ。地味に痛そう。
「っくそ」
「あー待って待って。これあげるから」
重い体をゆるりと起こしてカバンを漁る。ほいと渡した絆創膏に、勝之は動きを止めて目だけをぱちぱちと瞬かせた。
「お前……。これ他にも渡したやついる?」
「あー、この前一年生の子にも1枚あげたよ」
それがどうかした?と首を傾ければ、勝之は眉間を抑えて黙り込んだ。というかいらないの?血出てるけど。
「ねえ、」
「ちょっと喋るな。黙れ。静かにしろ」
「理不尽……!」
なんだか勝之まで疲れ切った顔をしている。私の体調不良が移ってしまったのかな。だとしたら何だか申し訳ないなあ。
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