《あぐらで空を飛べ》

「ぜってえ嫌だ」
「お願い。ホント、一生のお願い」
目の前に座る神谷君に手を合わせて懇願する。
「白河にでも頼めよ」
「勝之は死んでもやらないって言う」
「まあそうだろうな」
あの冷徹男が男装・女装コンテストなんて万が一にも引き受けてくれるはずがない。どうせ、誰がそんなの考えたの?それが面白いと思ってるの?くだらない。とか何とか言うと思う。私だってそう思う。
「でも文化祭実行委員になっちゃったんだからしょうがなくない!?ねえ!」
「俺に言われてもな」
「ごもっともで!」
くじ引きをした結果、面倒な役員になってしまった。学校行事のなかで文化祭は1番好きだけど、役員についてしまうと何かと忙しくてそれどころではなくなってしまう。放課後も残って会議とかあるし、下手したら土曜の午後も潰れる日があるかもしれない。
「ただでさえ文化祭終わったら補習で土曜なくなるのに……」
「ドンマイドンマイ」
「感情!」
ジト目で神谷君を見ていれば横から声をかけられる。
「ぴーぴーうるさいな」
「あ」
教室に戻ってきた勝之が、不機嫌そうに座った。私は視線を手元のプリントに移して、ダメ元で頼んでみるかと決心する。
「ねえ勝之さ――」
「出ない」
「まあ話だけでも、」
「出ない」
「優勝したら、」
「みょうじ、諦めろ」
神谷君に呆れながら止められた。やっぱり無理か。予想していたからダメージは少ない、というかない。とりあえず黒板にでも貼って募集してみようかな。
非協力的な男たちの席から移動してカツカツとチョークで文字を書く。
「みょうじちゃん、それ何?」
「なんか今年初めてするらしいんだけど、男装・女装コンテストだよ」
「はーい!私メイク担当したい!」
「本当?!お願いする〜」
ちらほらと人が集まってみんなプリントをまじまじと読み始める。面白そう、楽しみ、とはみんな言うものの、中々やりたいとは言ってくれない。まあステージに立たなきゃダメだし、何せ男装・女装しなきゃダメだもんね。
「なまえ〜、これいつまでに決めなきゃダメなの?」
「えっと来週の金曜?」
「じゃあそれまでに決まらなかったらくじ引きだね」
「そうなる」
できればそうならないでほしい。何か嫌な予感しかしない。誰が立候補してくれますように、と黒板に向かって本日二回目の懇願をした。

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