学校帰りに友人とファストフード店に寄ることにした。バニラシェイクだけを注文して、混み気味の店内から2人席を確保する。
「白河ってちょっとイメージと違うなあ」
「へ?」
椅子に座るや否や、友人が何やら興味深いことを言い出したので、シェイクを飲む手が止まる。
「クールで神経質で毒舌家」
「あと潔癖で陰湿」
彼の性格は幼い頃からあまり変わらない。私が遊びに誘っても『興味ない』『1人ですれば』とよく一蹴されたものだ。
「でもなまえ、本気で白河に突き放されたことないんじゃない?」
「うーん?」
「こう、幼馴染って周りからネタにされたりするじゃん?」
白河ってそういうの嫌がったりしそうなのにね、と友人は続けた。確かに。でもどちらかと言うと、散々茶化されてきたのは私の方だ。付き合ってるの?系の質問も、みんな勝之の威圧に負けて、全部私に回ってくる。
「ぶっちゃけ突き放したことあるの私の方なんだよね」
「え、そうなの」
「うん」
じゅっとシェイクをすすった。
中学の頃の話だ。私は1つ上の先輩を好きになって、人生で初めて勇気を出して告白した。声も足も震えて、心臓は爆発しそうなほどうるさく音を立てた。そんな一世一代の告白、結果はまあ見事にダメだった。
「その日ね、フラれてすっごいムシャクシャして、」
「ほう」
「勝之に思いっきり八つ当たりした」
「うわあ」
「『私に彼氏ができないのは勝之のせいだ!』って」
お手本のような八つ当たりだ。今考えれば『こっちの台詞だよ』と言われてもおかしくない。勝之は性格さえ目をつぶればいい男だと思うし、彼女の1人や2人ぐらい……。あれ?
「ねえ、私すごい疑問浮かんだんだけど」
「どしたの」
「勝之って今まで彼女いたことあるのかな」
「それはアンタがよく知ってるでしょ」
「いーや。全然」
私はお付き合いの経験がないから、報告をしたことはない。ただ勝之はどうなんだろう。彼はきっと彼女が出来ても私にいちいち報告しないだろうし、何なら周囲にバレないように付き合いたいと考えるタイプだと思う。……気になるな。
「なまえは白河に彼女ができたらどう思うの?」
「ええ、勝之にカノジョ……。大変そう」
「そういうことじゃなくて」
友人は苦笑いを浮かべる。私はヘラヘラと笑顔で話を変えた。
わかってるよ。彼女が聞きたいのは嫌かどうかって事だと思う。正直、心の底から応援できるかと言われたら、どうだろう。きっと勝之に彼女ができたら、私は勝之と距離を置かないといけなくなる。誰だって自分の彼氏が別の女と楽しくしてるのはいい気がしないだろうし。それがたとえ、勝之にとって何とも思ってない幼馴染だとしても。
「あ、そういえば私彼氏できた」
「ふうん……え!?」
「あっははリアクション最高」
いぇーいとピースをする友人に呆気を取られる。彼氏ができた?そんな兆候全然なかったのに!つい最近まで彼氏欲しい〜って言ってたのはどこの誰だ。
「とりあえず、おめでとう」
「どうもどうも」
「同級生?」
「うん。他校だけどね」
聞けば初めは全然タイプじゃなかったらしい。でも徐々に会う回数も増えて、お付き合いに至ったとか。
その人とは中学からの知り合いで、合コンやナンパといった類からの出会いではないことに、少しホッとした。私には何となくそういう出会い方は怖いなあと思っているからだ。
「古い!」
「ええっ」
「そんなんじゃなまえ一生彼氏できないよ!」
「ええ……」
言ったらこてんぱんに叱られた。そして一度合コンとやらを体験しろとお達しが出る。
「私彼氏できたから行けないし」
「いやいや」
「なまえ代わりに行ってきて」
「そんなん無理だって……」
「たまには白河以外の男とお喋りしてきなさい」
勝之以外って。たまたま勝之が近くにいるから彼に話しかけてるだけで、普通に神谷君やクラスの男の子とも喋ってるけどなあ。
「今週の日曜ね!可愛くしていきなよ!」
「えええ」
困ったな。
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