今日は午後から雨が降り続けていたので室内メニューだった。だらだらと鬱陶しいぐらい汗をかいたので、早くシャワーを浴びたくて仕方がない。
「最近練習エグいな」
「まあ予選近いしね」
「全身バキバキだわ」
この脱衣所に到着するまでに、隣の男はすでにパンツ以外何も身につけていなかった。だからその脱ぎ癖どうにかならないのか。もう見慣れたけれど。
「お前最近がっちりしてきたな」
「ウエイト増やしてるから」
もちろん過度な量ではない。自分の体格にあった分だけをこなしている。俺はパワーヒッターではないが、野球をする上である程度の筋力は必要なわけだし。
「その顔にその体格って……」
「何」
「女子はイチコロだな」
「バカじゃないの」
ニヤつくカルロスを置き去りにして風呂場に向かう。適当に空いてる場所のシャワーを使ってベタつく汗を洗い流した。さっぱりした状態で湯船に浸かっていれば、少し時間が経ってから隣にカルロスがやってくる。
「彼女ほしいなあ」
「それ前も聞いたけど」
「でも実際出来たら出来たで大変だよな」
「どっちだよ」
「どうしても野球優先になるし」
確かにそうだ。俺達の生活は野球が中心になっている。もちろん学生の本業である学業を怠るわけにもいかない。だから尚更、それ以外の事に時間を割くことが難しくなる。
「でも彼女持ちの先輩もいるけど」
「器用だよな」
「お前もそれぐらいできるだろ」
「お、褒めてくれてる感じ?」
「……」
「無視かよ」
ウチの部は別に恋愛禁止なわけでもないし、それでモチベーションが上がるなら結構なことだ。まあ俺にとってはどうでもいいけど。要は結果を出せば問題ないと言う話だ。
「お前は不器用だもんな」
「は?」
「俺、生壁ドン始めてみたわ」
一瞬何のことかと思ったが、朝のあれか。完全に死角だと思っていたけど、どうやら見られていたらしい。少し面倒なことになった。
「認めろよ。好きなんだろ」
「さあ」
「強情だな」
「お前に関係ないでしょ」
「ある」
「ないだろ」
ここは隅の方で、尚且つ大きい声でもない。だから周りは俺達の会話を気にしてる感じでもないし、むしろ各々別の話題で盛り上がっている。その方が助かる。
「同じチームメイトだろ?」
「そう言うことじゃない」
そんな事言い出したらここにいる全員がそうだろ。こじつけにも程がある。どうせ面白がって首を突っ込んでるだけでしょ。かといって馬鹿正直に「面白いから聞いてる」と言われてもそれはそれで腹が立つ。結局何をされてもむかつく。
「まあ頑張れよ」
「うざ」
「あと一個聞いてい?」
「……何」
「みょうじっていつもあんな下着つけてんの?」
一応気を使ったのか、さっきの話し声よりも随分とボリュームを下げて聞いてきた。割と真剣な顔で話しかけてきたので何事かと思えば、それか。俺の返事を待ってるカルロス目掛けて、思いっきり湯をぶっかける。
「うおっ」
「知るか、死ね」
カルロスをその場に残して先に風呂場を出る。
そんなこと、俺が知るわけないだろ。たとえ知ってたとしてもお前に言うわけないし。
馬鹿な質問をしてくるカルロスも、バカでへらへらしてるなまえも。とにかく俺は至極腹立たしい気分だった。
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