--充電中
((某CMのケータイ擬人化パロ))
「ふー、ただい」
「どこ行ってたのなまえちゃん!?」
私の携帯電話、吹雪くんは心配性だ。たった5分にも満たない外出に持って行かないだけで大騒ぎするくらい心配性だ。
「携帯電話なのに携帯しないなんて駄目だよ、ちゃんと持って行ってってば!ほんとに心配なんだから」
「ご、ごめんごめん。でも、吹雪くん充電中だったし…」
「心配しすぎて逆に消費しちゃった…。充電残量なんて気合いでどうにかなるって言ってるでしょ。途中でもなんでも関係ないよ」
「いや、携帯電話の充電は気合いじゃどうにもならないからね」
「僕はどうにかなるの」
「えぇぇ」
「とにかく、これからは何があっても置いてっちゃだめだよ。例え充電中でも忘れないでね」
「う、うーん…」
…納得しかねる。
吹雪くんは大丈夫と言ってるけど、やっぱりケータイであることにかわりはない。充電が切れればみるみるうちに元気がなくなってしまうし、無理をさせるのは気が引ける。
とりあえず笑ってごまかしていると、すっ、と目を細めた吹雪くんが近寄ってきた。
「……まだ納得してないでしょ」
図星をつかれてぎくりとする暇さえないうちに、吹雪くんに抱きしめられた。動けないでいる私の耳元に顔をおいたまま、吹雪くんは喋り続ける。
「僕はケータイだから、充電が切れることもある。けど、だからって充電中に置いていかれて、その間に君に何かあったら、僕はなんにもできないんだ」
「で、でもちゃんと充電しないと吹雪くんが…」
「…僕はどんな時も君の側にいて君を助けたい。なのにいざって時は充電中で何もできませんでした、なんて嫌だもの」
――だって僕、君のケータイなんだから。
呟くと同時に、回された腕の力が強くなった。
「…そんなこと言われちゃったら、納得するしかないよ」
「じゃ、もう置いてかないでくれる?」
「うん」
ようやく笑った吹雪くんだけど、何故か離れる気配がない。遠慮がちにその背中を叩くと、むしろもっと力を込められた。
「一緒にいられなかった分、充電と一緒になまえちゃんゲージも充電不足になっちゃったんだよー」
「な!?」
「心配し過ぎて消費しちゃったって言ったでしょ。だから充電終わるまではこのままで、ね」
私、これからは絶対にケータイを置いていかないことを誓います。だって置いていく度にこんなんじゃ、…恥ずかしくて私の方が持たないもん。
11/02/05
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