--まるで金魚みたいに
(金魚が死んでます)
(夢主は変、ねじが少しとんでる)
ゆらゆら、ゆらゆら。目の前で揺れる水槽には、腹を上にして浮く赤い金魚と、揺れる緑の水草。まるで羽衣のように水中でひらめいていたそれは、ただ水に揺られるだけのものになった。金魚は死んだ。
この金魚は何故死んだんだろう。エサもやって、掃除もして、水草も、酸素もあげた。何故、死んだんだろう。足りない物はない。なら、なんで?
ヒロトに問い掛けると、穏やかな笑みと共に答えが返ってきた。
「あついからだよ」
確かに今日は暑かった。けれど、あの部屋はそこまで暑かっただろうか。窓際にいたわけでもない。
だが、自分がそうでもあの金魚には暑かったのかもしれない。それで茹だってしまったのだろうか。そっか、とヒロトのことを見ると、違うよと首を振られた。金魚を掴んだきみのてが、熱かったからだよ。
はて、私の手は熱いのだろうか。人並みに温かいのだけど。確かに私は今日、その羽衣のようなきらめきを手におさめたくて、金魚を掴んだ。窒息しないよう水に戻してやりながら何度かそれを手に掴み眺めるうちに、あのきらめきは水の中でなければ見れないと気づいたのでそれからは水槽に戻してほうっておいた。
ヒロトいわく、私の人並みの体温でさえも金魚にとっては熱く、火傷してしまうらしい。生き物は暑すぎても熱すぎても死んじゃうんだとヒロトは言う。なら、私も熱すぎたり暑すぎたりすると死んじゃうのか。
俯く私の頬に、ヒロトの手が触れる。そのまま近付いてくるヒロトの赤い髪が、緑の瞳が、ゆらゆら、ゆらゆら。頬に触れる手が熱い。体中が暑い。瞳が閉じられて、唇に熱いものが触れる。あ、私、あつくてしんでしまうのかな。
++++
日々あつくてしにそうです。
10/08/12
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