--驚かずに聞いて欲しい


あたまわるめの短文

***

「…お伝えしたいことがありまして」

神妙な面持ちに少し動揺する。初めての泊まりで何か気に障ることがあったのか、いや、しかし、まだ何も…というか今日はこのまま、穏やかにと、そう話していたのだ。「実は…」一体、何を。僅かに緊張して言葉を待った。

「…………あの、あのね。その…たぶんなんだけど…………ぃ、じゃうと、おもう……」
「…?すまない、よく聞こえなかった。なんだ?」
「……私。その、夜ね、ねてるときに、ふくを…ぬいじゃうと思うのですが…」
「…………は?」

一瞬、思考が止まった。服を…服を脱ぐ。いや、斬新な閨の誘いか、などと聞ける風ではないのはわかる。とんでもなく申し訳なさそうな顔をしているのだ。とてもではないがそういう事とは思えない。

「ええと、いつもはさ、ホラまあ何、そのままだったから…まあ、朝着替えてたけど!今日はそういう事しないって言ったじゃん…だからその、予め言っといた方がいいかなぁって…」
「つまり…その、なんだ。…寝てる間に、衣類を脱ぐ悪癖があると」
「下着はつけてるよ!…たまに見つからないけど…」
「たまにみつからないのか…」

深刻な話でなくて良かったと喜ぶべきか、それとも朝、恋人が何もしていないのに生まれたままの姿になっている可能性があることについて…喜ぶべきか頭を抱えるべきか…いや、どうすればいい。どういう反応をすればいいんだ、これは。

「ごめんなさい本当に…見捨てないで下さい何卒…」
「いや、別に良い…のか…?ともかく、なんだ。風邪は引かないようにしてくれ…?」

落とし所が全く分からない。まあ、深刻な話ではなくて良かったとする。…本人的には深刻な話だったかもしれないが…外泊禁止令を出すか出さないかというくらいだろうか。下着くらいはつけていてくれ、頼むから。



という所まで考えてから、自分も動揺していることを
改めて自覚した。最悪自分も予め脱いで寝てやればいいのでは無いかという考えが頭を過ぎったが、何の解決にもならなかったのだ。


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