トレーニング中に帰り道が解らなくなった所に、たまたま同じクラスの空井薙と会って。駅まで送ってもらったのがつい1時間前の話で。
母親に自転車で行ったんじゃないのか、と不思議な顔をされたのがついさっきの話だ。
あれは断じて迷ったわけじゃねえ、道が解らなくなっただけだ。
駅まで送ると言われたときにパッと浮かんだ言葉は、「何言っとんだこいつ」だった。
条件反射で断ったが「ここから駅まで、道解らないでしょ?」とまで言われたら従うしかない。クソ腹立つ。
確かにこいつ自身強いし頭も良いらしいし、ついでにその辺のモブ共とは比べ物にならないくらいの強個性の持ち主らしい。全部アホ面とクソ髪が言ってたのを聞いてたレベルだからどこまで合ってるかは分からんが。
それでもふとした時、もし反応に遅れでもしたら?いくら空井が強かろうとこの暗い中、それなりにガタイのいい野郎なら簡単に、とはいかずとも危害を加えることぐらいは出来るだろう。加えてそいつがもし凶器を持っていたら?考えただけでゾッとする。本当に何も考えてねーのかあいつは。
空井に悟られないようにそんな事を悶々と考えながら歩く駅までの道は、今までまともに話した事が無かったとは思えないくらい、有り体な言い方をするならば、普通に楽しかった。
__本当は「今日、このまま自転車で帰るのは危ない」と言われたとき、この何も考えてなさそうなアホともう少しでも一緒にいられるならばそれも悪くない、という考えがよぎった。つか危ないのはお前の方だろうが。
ぶっちゃけ、普段はその辺の女が俺の知らない所でどうなろうが知ったこっちゃない。だから初めてまともに話す奴に何でこんな感情が湧いてくるのか理解できなかった。
でも普段から関わりがなくともそれなりに目に付く奴だったからまあ、始まりは案外こんなもんなのかもしれない。
雄英からこの駅までの道が分からない(かも知れない)と言ったら「じゃあ明日は一緒にここまで帰って来よう」なんて言いやがる。
それでも、明日も一緒にいられる。そう考えたら
柄にもなく少し、ほんの少しだが明日が楽しみになってきた。
雄英からの道ぐらい路線図見ればわかるっつーの
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(2017.7.5)(2020.6.23加筆修正)