*上耳
高校に入ってから仲良くなった耳郎響香に恋愛相談をされたのがつい昨日の話。顔を真っ赤にして話してくれる響香かわいいよ、じゃなくて。話ぶりからして本当に好きなんだなあという事はすぐに解ってちょっと心が暖かくなった。いいねえ青春。
ところで話は変わるが、今私を「レモネード奢るから話聞いてくんね?」と好物であるレモネードで釣りうだうだ恋愛相談してる奴こそ、響香が昨日好きだと言っていたクラスメイトの上鳴電気。そして何を隠そう私の幼馴染であり初恋の人という、我が事ながらもう既にドロドロの予感。
「……って薙さん聞いてる?」
「ごめん全然聞いてない」
もっかい話すからちゃんと聞いとけよー、と口を尖らせてから目の前の奴はまた律儀にはじめから話し始める。入学したすぐはそこまで気になってなかっただとか、最近気になりだしてから上手く話せてる自信が無いだとか。
自分の中だけでは折り合いが付かなくなってきたらしく幼馴染で気心の知れた私に相談...…もとい吐き出しに来たらしい。いつもの軽薄さはどこへ行ったんだという程にうだうだぐだぐだ。ああもう鬱陶しい。私の気も知らないで。
適当に相槌を打っていた所、ある程度吐き出して落ち着いたらしくその日はそのままお開きになった。レモネードは美味しかった。めでたくくっついたら響香を誘ってまたこのお店に来ようか。
それからどれくらい経ったのかはあまり覚えてないけれど、電気が響香に告白してokされたらしいという事をお互いからそれぞれに報告された。うんうん、青春眩しいね。
__親同士の仲が良く、たまに遊んでいた「でんきくん」が友達から好きな人になった時、なんてもう覚えていない。
ただ、初めて彼を認識したときならうっすら覚えている。気がする。公園かどこかで泣きじゃくっていた私に、たまたま持っていたレモネードをくれた時だったか。うろ覚えじゃんやば。
……まあなにせ十年前位だから記憶なんて有って無いようなものだ。思ったより覚えていなくても仕方がない。ただ、レモネードを好んで飲み始めたのはそれくらいのときからだ。それは間違いない。
中学生になって、電気が初めての彼女を作って嬉しそうにのろけついでに報告してきた時の感情ももう覚えていない。ってかこれはむしろ思い出したくない。ただそのときはわかりやすく荒れた。
そのあとも、前の彼女と別れたとか新しい彼女が出来ただとか、何かある度にいちいち報告してくれるからここで私も告白してしまおうか、とか考えてみても勇気とタイミングがどうにも掴めなくて。それで結局そのまま今に至る。
……かわいい友達と幼馴染が幸せならそれで嬉しい。心から祝福する。別にそこが嫌なわけでは無いんだ。でもやっぱり電気の隣に居られることはなんていうか、羨ましいし妬ましい。
まあ、今まで伝えてこなかった私がどうこう言えたことでは無いのだけれど。
それでも、
「おめでとう、やっとくっ付いたか。」なんて返したとき、私は上手く笑えていただろうか。
その後一人で飲んだレモネードは少し変な味がした。
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(2018.2.9)(2020.6.24加筆修正)