片親がヴィランで、兄もヴィランなんて。一般家庭よりヴィラン寄りの家庭に育った私が初めて憧れたのは、チンピラに襲われそうになっていた所を助けていただいた浮浪者みたいなヒーローでした。
それから数年、幸いにもそこそこ融通の利く個性を持って生まれた私は色々調べあげた結果あのヒーローが教師をしているという雄英高校に必死の思いで入学しました。そしてなんとクラスの担任がそのヒーロー(隣の席の男の子が言うにはイレイザーヘッドと言うそうです。)で、まさに運命の巡り合わせかと思いました。
が、しかし。
先生が言うには、どうやら私達のクラスは見込みがないらしいです。ホームルームもそこそこに全員除籍処分になりました。体力テスト等もしないうちから何が分かったのでしょうか。考えうるのは体格か目付きでしょうか。覇気がないとか。しかしそれは今から訓練して身につけていくものでは無いのでしょうか。でもありえそうですね。
このとき何が1番悲しかったかと言うと除籍処分になった事実よりも「そうなんだ」と夢へのスタートラインに立つ前に道を絶たれた事をすんなり受け入れてしまえた自分に、でした。あぁ、なるほどこういう所なのでしょうね。
__ヒーローに憧れたとき、少し、ヴィランの兄達と私は違うのだと思うことが出来ました。兄達はあんなだけど私には違う道も目指せる、と。
ええ、しかしそれはどうも思い違いだったようです。例え名門校を除籍処分になったとしても別のアプローチで夢を追いかける事は出来たはず。けれどもそうしようとは思えなかった。必死になって入学した学校を初日に除籍された事で私の中のヒーローへの思いは殆ど消えてしまったようで、有り体に言えば心が折れてしまいました。
そしてその後は声をかけられるままヴィランの道へ進みました。ヒーローになる為にした努力のおかげで決して弱くないヴィランとして立ち回れる様になったのは皮肉なものです。
さて、今日の任務は山奥で合宿中らしい後輩くん達を襲い爆豪くんという少年を攫う、もとい勧誘する事らしいです。
だけどこれは、情報伝達ミスでしょうか。何故「彼」が此処に居るのでしょう。そりゃあ同じ学校なのだから転勤しない限り居る事でしょう。一瞬だけ私の担任だった「彼」が偶然今のクラスの担任をしている可能性を考慮していなかった、これは私のミスです。ですが引率の先生が誰か〜なんて弔くんなら知っていたはずでは?何で教えてくれなかったのでしょうか。これはもしや「教えなくてもお前ならなんとかできる」という期待の表れでは?弔くんの脳内なんて知りませんが。
まあ、任務としては爆豪くんを探しつつ自分が捕まらなければそれでいいのです。「彼」もどうせ私の事など覚えちゃいないでしょうしサクッと終わらせてしまいましょう。
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(2019.3.24)(2020.6.24加筆修正)