半分くらいは既に削ってあったので1人でもギリギリ倒すことはできたが__俺自身まぁ、悲惨な状態になった。呪力は尽きたし全身血みどろだし、敵の攻撃をくらって体縮むし。何を言ってるか分からねーと思うが俺も何をされたのか分からなかった。体が縮む攻撃ってなんだよ。同人誌か?
確か身長がメキメキ伸び始めたのが中3のときからで、そのときより低いから少なくとも中2かそれ以下か。血が足りない上に視界が低くてちょっとイライラする。
祓ったあとも動く気力がなく、呆然とその場に立ち尽くしていたら迎えに来てくれた補助監督さんにちょっと叫ばれたけどそれはご愛嬌。血みどろの人間がいたらそりゃ叫ぶよね。わかるわかる。俺反転術式使えないし、硝子のところまで運搬頼んだよ。俺はもう動けそうにないので。
あの後硝子に怪我を治してもらったが体が縮んだのはさすがに治せなかったらしく。こういうのはだいたい一生このまま、というよりは時間経過で戻るのがセオリーなのであまり気にはしてない。が、祓われてからも残る攻撃自体数が多くないのでなんとも言えない。
大量の血がこびりついたボロボロの制服を着替えようと自室までの廊下を歩く。ここまでボロボロだとクリーニングに出しても直らないかもな。捨てるか。また制服支給してもらわないとな。でも支給願いみたいな書類書くの、正直すげえめんどくさい。
そういえばサイズはどうしようか。今は縮んだせいで四肢も縮み服の裾と袖は少し折ってある状況だ。擦って歩くよりマシなのだろうが__制服に着られている感じで絶妙にダサい。でも縮んだサイズで支給してもらっても戻ったときに戻ったサイズでまた支給してもらわないといけなくなるのでとても面倒である。元のサイズでいいか。そうだな、戻るまでの間多少ダサくても__例え五条に笑われようとも、我慢すればいいだけだ。笑われたら多分殴るので我慢しているとは言えないだろうが。
「あれ、任務終わりかい?」
「ん?あぁ傑か」
いつの間にか自室近くまで来ていたらしく隣の部屋の傑が扉から顔を覗かせた。そうなんだよちょっとしくってさ〜なんて言いながら振り返ると傑の喉がカヒュッという音を立てる。あ、まずい。
「大丈夫だ、俺はここにいる。ゆっくり俺の真似をして息を吐くんだ」
過呼吸を起こしてしゃがみ込んだ傑に慌てて駆け寄り背中をさする。最近は大丈夫だと思ったが__今回は体が縮んでいるからかだめだったみたいだ。というのも、傑はたまに過呼吸を起こす。心当たりしかないので非常に申し訳ないが言っても後の祭りなのでもう何も言わない。傑が落ち着くまで少しその話をしよう。
幼稚園から一緒にいた俺達が中学生になって初めての体育祭のこと。
昼の休憩時間に傑と二人で校舎裏で駄弁っていたところに呪霊の襲撃を受けた。そのときは中学全体で
それから傑は俺が血みどろになると過呼吸を起こすようになった。最近は俺も1級術師になって血みどろになる回数も減って。たまに血みどろになっても過呼吸を起こすことなく落ち着いてきたように思えたが、今回はその中学生のときくらいまで体が縮んでしまっているから、こう、余計にフラッシュバックしたのだろう。他人が想像しただけで辛いので多分本人はもっと辛いのだろう。可哀想に。
……っとまずいな、傑の過呼吸が全然治まらない。しかしあいにくここには袋もタオルもなく、近くにある布といえば俺の上着くらいだがさすがに血みどろのものを顔面に押し付けるわけにはいかない。どうすればいい、俺がパニックになるな。あ〜っと確かこういうときは息を吸いすぎないように、とすると少し息を止めて見たらいいのか?
となると。さすがに今からすることは誰かに見られたくないだろう。少し移動してドアを閉める。背が縮んだ事でいつもより開いたはずの身長差もしゃがんでいるため気にならない。立ったままだと無理かもな。と頭の端で場違いな事を考える。ええい、腹を括れ、大事な幼馴染を落ち着かせるためだ。他意はない。
「マジでごめん、後で殴ってくれ」
あ、でも傑にガチで殴られるのは嫌だな。普通にめちゃくちゃ痛そう。
誰かからキスをされているのか、一定の間隔で唇に柔らかいものが押し付けられる。ふわふわした意識の中で繰り返されるその行為は正直心地がいい。だから少し落ち着いた今、多少がっついてしまっても仕方ないと思うのだ。
離れそうなタイミングで後頭部を引き寄せ、驚きで少し開いた口に舌を差し込む。しばらく逃げ回る舌を追いかけて遊んでいたがそろそろ捕まえてもいいだろう。
「んむ、やぇ……」
あぁ、可愛い声だ。普段の溌剌とした声からは想像できないほどに蕩けた甘い声に脳髄から痺れが走る。視界はまだふわふわしていて焦点は合わないが、多分可愛い顔をしているのだろう。早く見たい、もっと聞きたいと思って離せなくなるのも仕方がない、と思う。
____待て、
今私がキスをしているのは誰だ。ハッとして目の前の人を引き剥がす。そこに居たのは真っ赤に蕩けた顔をして目を回した__そして何故か記憶より少し幼い、幼馴染だった。完全にやらかした、確かに薙とは幼馴染以上になりたいけど、それは__薙は血塗れになるほどの任務上がりで疲れているだろうし、とにかく今じゃない。今じゃなくてもいい。
「……………………寝るか」
何か、温かいものに包み込まれていることに気が付き、目が覚めた。落ち着く匂いがする。これは多分傑が使っている柔軟剤か香水かシャンプーの__は?
「は???」
完全に目が覚めてしまった。昨日は何があった?確か等級詐欺の呪霊を祓って帰ってきたら傑が過呼吸を起こして、なかなか治まらなかったからキスをして__うわ、全部思い出した。着替えさせてもらったのか、血みどろの制服ではなく傑のトレーナーを着ているのは驚いた。今は縮んでるし完全に彼シャツじゃないか。こういうのは小さくて可愛い子にやってもらうのがロマンだろうが、おっと自分が縮んでいることを忘れていた。可愛いかどうかは知らないが。
誰かと間違えてたんだろうけど、傑のキス、すげえ上手かったな。正直キスってあんなに気持ちいいの?ってレベルで気持ちよかった。昔からめちゃくちゃモテてたもんなぁ、傑。経験値が違うんだろうな。
「ん゙、」
「あぁ、傑起きちゃった?今日はお互い学校も任務もないし寝てていいよ」
昨日の今日で疲れてるでしょ、と言うと少し瞬きをして小さく返事をした後、縮んだ俺を抱き枕にしたまま幸せそうな顔で夢の世界に旅立って行った。
……うん、まあ俺のポジションは可愛い女の子じゃなくていいのかとか言いたいことは色々あるけど、傑がいいならそれでいいか。
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2021.2.16