・夢主は半田と同い年
・夢主は半田と付き合っている


 肌に突き刺さるような日差し。
 その日差しを照り返すアスファルト。
 じわじわと嫌な汗をかく蒸し暑さ。
 夏本番、と言ってもいいであろう今の季節、登校するだけでもあまりの暑さに何もかも投げ出したくなる。
 歩いているだけで体力をゴリゴリ削られるが、重たい足をなんとか動かしながら、なまえは学校へ向かう。
 いつも通っている道なのに、こんなにも億劫になるのはこの馬鹿みたいな暑さのせいだろう。
 なまえは、自分の体から吹き出す尋常でない量の汗に、地球温暖化が騒がれている理由がよくわかった。

「あ、なまえじゃん。おはよ」

 後ろから声が聞こえ、みょうじは振り返る。そこには半田がいた。
 ――やばい、今私汗だくだ。
 まず始めになまえが思ったのは、その一文だった。汗の匂いや、汗でぐちゃぐちゃになった髪の毛が張り付いた顔ーーこんな不細工な状態、半田に見せられないと思った。
 そんな風に思いながら、おはよう、と軽く挨拶を返して、俯く。
 俯きながらもチラリと半田を盗み見ると、半田は不思議そうになまえを見ながら首をかしげていた。

「どうしたんだ?」
「いや、えーっと、今すごい見せられないグロッキー状態だから」

 なまえがそう言うと半田は、「は?」と言わんばかりに眉を潜めた。
 グロッキー状態では、半田には伝わらなかったようだ。少しくらい察してほしいと、なまえは心の底から思った。
 頭からハテナマークを大量に飛ばしている半田に、なまえは「汗がね」と一言呟いた。
 すると、半田は理解したようで、「あーはいはい」などと何度も頷いた。
 そして、軽く笑い始めた。
 なまえは耐えられず、もう一度俯いた。

「笑わないでよ…」
「いや、別にそんなこと気にしなくてもいいのにって思ってさ」

 そうは言われても、年頃の少女なら誰でも気にすることだろう。彼氏の前で、こんな整っていない格好はしたくないと。
 完璧な自分でなくては、幻滅されてしまうかもしれない。なまえはそれが嫌だった。
その旨を伝えると、半田が再度笑った。

「そんなこと言ったら俺だって汗だくだろ?」

 ほら見ろよ、と続けられて、なまえが俯けていた顔をあげ、半田を見る。
 確かに、半田もなまえと同じくらい汗をかいている
 「な?」と言われたので、なまえは静かに頷いた。

「気にならなくなっただろ?」
「うん、ありがとう。お礼にお菓子あげる」
「やった、ラッキー」
「はい、チョコ」
「アホかよ」

 なまえが小分けに袋に包装されたチョコレートを渡そうとすると、お菓子と聞いて受け取ろうとしていた半田の手が鋭いチョップになってなまえの頭を直撃した。
 これはかなり痛い。彼女の頭をチョップするかと、なまえは半田を軽く睨んだ。

「酷い」
「だってお前、これ絶対溶けてるだろ!なんで真夏日にチョコ持って登校してるんだよ!」
「形はなくてもチョコはチョコだよ」

 なまえがもっともらしいことを言えば、半田はグッと言葉を詰まらせる。
 「それでも嫌だよ…」と弱々しく呟いて受け取りを拒否された。拒否というか、もう、拒絶に近かった。
 なまえは「なんだ、いらないのかー」と、残念そうに言ってみせた。

「じゃあマックスにあげよう。彼なんでも食べてくれそうだし」
「どういうイメージだよ。流石のマックスも溶けたチョコはお断りだと思うぞ」

 優しさの欠片もない半田のツッコミが入る。
 不満げな声をもらし、溶けたチョコはどうすればいいのか、訊いてみるなまえ。
 持ってきたのはなまえだし、この状況の元凶もなまえなのだが。
 それでも、半田は「うーん」とちゃんと考えてくれている様子だ。
 なまえは、半田のそういうお人好しなところ、優しいところが大好きなのだ。
 そんなことを考えていたら思わず頬が緩み、すかさず顔の筋肉に力を入れた。

「仕方ないな。俺が食べてやるよ」

この優しさ満開の結論に、なまえは目の前の最高の彼氏のことが、愛しくてたまらなくなった。