04
「やあ名前。久しぶり」
「夏油さん!お久しぶりです!」
わたしの家の近くのお寺。
ここの夏油さんという住職?のお兄さんにはすごくお世話になっていて、魔法少女になる前は放課後よくここに通っていた。
お坊さんにしてはずいぶんと若い上坊主頭ではないのが気になるんだけど、お寺の役職に詳しくないのとなんだかタイミングがわからなくて聞き出せずにいる。
「随分会えなかったから寂しかったな。学業が忙しいのかい?」
「そ そう、です。すみません」
「っはは、謝らなくていいのに。」
嘘はついていない…と思う。まさか魔法少女になって呪霊を退治してるので来れなかったです〜とは言えない。
彼にはわたしが変なものが見えるようになってからよく相談に乗ってもらっていた。こういった悩みはお寺とかがいいのかな、と思って思い切って打ち明けた私に「私には見えないけれど、何かできることがあれば力になるよ。」と言ってくれて、それからこのお寺によく通うようになった。
そこかしこに呪霊が見えるこの街で、ここでは不思議とあまり呪霊を見かけなかった。多分お寺という神聖な場所だからだと思う。見え初めの頃はいろいろと不安でここに来ると落ち着けたから、一時期毎日のように通っていたっけ。
「今日来ると思ってなくてね。丁度お茶菓子を切らしてしまっているんだ。お茶しか出せないけれどあがって少し待っていてくれるかい?」
「あっいえおかまいなく!突然来たのはわたしの方ですし!」
「折角来てくれたんだから、近況報告も兼ねてお喋りがしたいな」
「そういうことでしたら……しつれいしまーす……」
お寺に上がらせてもらうと、ふわっとお香のいい匂いがした。この香りも久々だなあ。
しつこすぎず、爽やかでいて安心感のある夏油さんって感じのする香り。
「緑茶でいい?」
「はい!緑茶すきです!」
奥から二人分のコップとピッチを持って夏油さんが出てきた。冷たい緑茶だから当たり前なんだけど、急須とかじゃなくてプラスチックのピッチなのがなんだかお寺という空間とミスマッチでおもしろい。
「最近どうかな。学校でいじめられたりはしていないかい?」
「大丈夫ですよ!悠二くんもいるし、担任の先生も信頼できますし」
「悠二くん…というのは前に君が言っていた幼馴染の?」
「そうです!」
「私も君が心配だから教師にでも転向しようかな?」
「えっ!?夏油さんが先生に!?」
「っふふ……冗談だよ。」
「夏油さんもそういう冗談言うんですね」
「おや、意外だったかい?」
あの相談をしてから夏油さんはなにかとわたしを気にかけてくれる。変なものが見えることで周りの人にいじめられてやしないかとか、ちゃんと寝れてるかとか。
そんな夏油さんと一緒にいる時間は居心地がよくて、“見える”相談だけじゃなく普段の愚痴を聞いてもらったりただただお喋りするためだけにも来たりなんかして。この落ち着く感じも久々だなあ。なんだか安心したら眠くなってきた…
「眠いの?疲れているのなら寝てもいいよ」
「いえ、そういうわけには……」
「ここに来れないくらい忙しかったんだろう?少しくらい構わないさ」
「うう…でも夏油さんとお喋りしたい……」
「ふふ、それならもうちょっとお喋りしようか。眠くなったら寝てもいいからね」
***
「名前、起きて。6時半だよ。」
話してる間に寝てしまったらしい。夏油さんちの毛布がかけられていた。
「んん……あれ、わたし寝ちゃってました?」
「それはもうぐっすりと。」
「やだ恥ずかしい……起こしてくれてよかったんですよ!」
「少し疲れているみたいだったからね。休ませてあげたくて」
たしかにここ数日は毎日放課後は魔法少女として呪霊を退治していたから、自分でも気付かないうちに身も心もだいぶ疲れていたのかもしれない。
「久しぶりなのにいっぱい甘えちゃってすみませんでした……」
「いや、私もこうして甘えてもらえるのは嬉しいよ。」
優しく頭を撫でてくれる夏油さん。わたしにもこんなお兄ちゃんがいてくれたらなー、と思う。
「何かあったら遠慮せずここにおいで。勿論、何もなくても歓迎するよ」
「はい!!」
「気をつけて帰るんだよ」
「ありがとうございます。じゃあまた!」
今日ここに来れてからかなりリフレッシュできた気がする。夏油さんは相変わらず優しくていい人だし、どうにかして時間をつくって定期的に来れたら夏油さんにもあんまり心配させなくてすむかな、と思った。
よし、明日も頑張るぞ!
わたしは夏油さんに大きく手を振って家路についた。
「ああ。また近いうちに、ね」