綾辻さんと黒髪眼鏡地味系男子/wt
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「っ、」
「なに」
短く、ぶっきらぼうにそう問われて、私はどうしていいか分からず目を彷徨わせる。なんて言おう、ええと、ええと。何も言えずに固まっていると、空木くんは目を少し細めて、溜息を吐き出した。はあ、と、呆れたような重たい溜息に、泣きたくなった。
「こっち見んな」
ああ、やっぱり空木くんは怖い。
▽
それからしばらくして、ボーダーの本部で空木くんを見つけて、私は飛び上がりそうなほど驚いた。空木くん、ボーダー隊員だったんだ。太刀川隊の出水くんや三輪隊の米屋くんと話しているその姿は、普段学校で一人でいる空木くんとは同一人物とは思えないほど楽しそうで、よく似ている違う人なんじゃないかと思った。影に隠れてそれを見ていたら同じ隊の佐鳥くんに話しかけれて、びくりと漫画のように跳ね上がった。何してるんですかと問われて、返答に困っていると、少し離れたところにいた出水くんたちがこちらに手を上げて近づいてきた。つまり、空木くんも近づいてきているわけで。私はどうしたらいいか分からず固まって、とりあえずいつものように笑顔を浮かべておく。
「よー佐鳥。何してんだよ」
「出水先輩! いや、綾辻さんが」
「こ、こんにちは」
ちらり、空木くんを見ると、いつも教室で見る無表情に戻ってしまっていた。私がいるからだろうか、と少し落ち込んでいると、佐鳥くんが「大丈夫ですか?」と心配してくれる。大丈夫だと苦笑して答えると、出水くんと米屋くんも続いて心配してくれた。大丈夫だと首を横に振って、笑う。そうしていたら、空木くんと目があった。ビクリ、肩が震えた。
「………」
空木くんは変わらず無表情で、呆れたような、重苦しい溜息を吐き出した。思わずごめんなさいと謝ってしまいそうになる。
「おいおい空木ー、怖がってんじゃん」
「知るかよ」
「相変わらずつめてーの」
私は苦笑を浮かべたまま、大丈夫だと告げて踵を返した。
やっぱり、空木くんは――…
「綾辻」
「っ、」
一瞬、誰に呼ばれたのか分からなくて、固まってしまう。そうして空木くんに呼ばれたのだと気づいて、慌てて振り向いた。出水くんも米屋くんも佐鳥くんも空木くんの方を見ていて、やっぱり空木くんが、と確信して、そして首を傾げる。
「えっと、」
「体調」
「、」
「体調悪いなら、帰れば」
「……え、」
言われたそれに、思わず固まる。どういうことか、よく分からなくて、言われた言葉だけが頭の中をグルグルと彷徨った。ええと、ええとつまり、ええと。
「(心配? してくれた?)」
出水くんや米屋くんが「おい冷たいのも大概にしろよなー」と注意しているが、多分きっとそうだ。これは、空木くんなりに心配してくれた言葉、だと思う。
「………あ、ありがとう…」
お礼を言うと、出水くんと米屋くんは不思議そうな顔をして、空木くんはフンと顔を逸らした。
空木くんは、そんなに怖くない、のかもしれない。
▽
甲斐たつき(カイタツキ)
十七歳。
黒髪黒目、黒縁眼鏡の地味系男子。
若干天パの入った長い黒髪と大きな黒縁眼鏡のせいで顔がよく見えない。
ただちょっと目つきが悪いようす。
綾辻さんと隣の席。綾辻さんに冷たいが綾辻さんが嫌いなわけじゃなく結構皆にそんな感じ。
小説家を目指していて、授業中にコソコソ書いていたりする。集中すると小さく口に出てしまうことがあるので綾辻さんに怖がられてる。
学校は違うが出水とか米屋とかと仲が良い。
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