二人で刻む


 冬の風が頬を打つ。帽子にマフラー、コートでいくら身を包んでも防ぎきれない寒さ。
 雪道に二人分の足跡がゆっくりと刻まれていく。

「やっぱり出かけるんじゃなかったな……」
「もう、レオナ先輩が買い出しに行くぞって連れ出したんじゃないですか」
「こんなに寒くなるとはおもってなかったんだよ」

 首をすくめてマフラーに顔を埋めたレオナ先輩は尻尾もコートの中にしまって、お耳もぺたり。すっかり寒さにやられてしまった姿が可愛らしくて頬が緩む。

「……手袋、失くすなよ」
「あ、はい!」

 注意され、ポケットから顔を出していた手袋を奥へと押し込む。
 お出かけするなら手を繋ぎたい。手を繋ぐなら素肌が良い。
 お互いの意見をすり合わせた結果、少し間抜けだけれど手袋を片方だけ外してつないだ手をレオナ先輩のポケットに突っ込む形で落ち着いた。
 上質なコートの中で絡んだ指先は下手に手袋をしているよりも温かい。その理由が互いの体温なのか、心が温まるからなのかは定かではないけれど、幸せなのは何よりも確か。

「来年もまたこうして過ごしたいですね」
「どっかの誰かが他の男と出かけなけりゃ機会は山ほどあるだろうな」
「まだ熱砂の国に行ったの根に持ってる」
「当たり前だろ」
「ふふっ……」

 思わず笑みがこぼれてしまった。当然、レオナ先輩が少し拗ねる。
 嫉妬深いというよりは、寂しがり屋に思えてしまうのは私だけだろうか。

「大丈夫ですよ、レオナ先輩。熱砂の国なんてこの世界のほんの一部でしょう」

 世界地図を見ればまだどんな国なのかまったく知らない国もたくさんある。もちろん、レオナ先輩の母国のことも知っているとは言い難い。
 来年はきっともっといろんなことを知るのだろう。世界のこと、魔法のこと、そしてレオナ先輩自身のこと。

「ハッ……どうだかな」

 目を眇め、口角をあげるレオナ先輩はちらりと私を見る。

「お前はちょっと目を離した隙にすぐに面倒に巻き込まれるからな」
「それは……ちょっと否定できないかも」

 学園長のお願いにグリムやエース達が持ってくるトラブル。私がトラブルメーカーだとは思われたくないけれど、巻き込まれてはいるもんね……。

「だから、しっかり傍に繋ぎとめておかねぇとな」

 指先が優しく手の甲を撫でる。温かくて、大好きな優しい手。私も何があってもこの手を離さない。例え本人が離してくれと言ったとしても絶対に。
 横柄で怠惰な、本当は誰よりも繊細で寂しがり屋な私だけの王子様。
 願わくば、来年も、そのまた翌年も、オンボロ寮から続く二人の足跡のように一緒に多くの思い出を残せますように。

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