獅子の護衛は誇らしい!


 独占欲が強い獅子の王子がいわゆるイイヒトと消えた扉を守りながら衛兵の男はぐるぐると己の思考を埋める二人のことを考える。

「お似合いとかそういうレベルの問題じゃないんだよなぁ」

 生憎と学がないので政治には疎い。けれど王族には相応の相手が選ばれるべきと謳うお偉方の言い分もまあわからなくはない。
 けれど我らが殿下に至っては彼女以上の相手を見つけろというのは無理な話ではないだろうか。
 目元を緩ませ、柔らかい声で囁く獅子を初めて見た時から二人が成就するようにと男はずっと願っている。

「なあなあ、殿下のお連れさんはどこのお偉いさんの娘さんなんだ?」

 何も知らない新人は息を声をひそめ、けれど好奇心を隠しもせずに問いかけてくる。キラキラと輝く瞳。きっと彼も例に漏れず王子と連れそう女性はどこぞの令嬢と思い込んでいるのだろう。
 昔の自分を見ているようでため息の前に笑いが溢れた。聞いて驚け、あの子はお偉方なんて目じゃないくらい凡人には縁を結ぶのが難しい方なんだ。

「異世界から来た殿下の大事な大事なお姫様だよ」

 地位も名誉も持ってない。けれど悪評ばかりを抱かれていた我らがレオナ殿下のイメージをひっくり返した。そのおこぼれであの方は自分達にも柔らかく微笑む姿を見せてくれたのだ。慕うには十分すぎる。

「異世界……?」

 不思議そうにちらりと扉の向こうに意識をやる新人も、さらさらとほんの小さな隙間から入り込む砂のようにあの二人に心を埋め尽くされるのはきっとそう遠くない。

「んなことより集中集中! 問題が起きて二人の時間を邪魔したらぶん殴られるじゃすまねえぞ!」
「は、はい!」

 居住まいを正した新人を通りすがりの召使いや他の近衛兵たちがくすくす笑う。
 男の自分達ですら彼らに興味を惹かれるのだから、女性は尚更なのは言うまでもないだろう。

「メイ様に何かあったら殿下以上に女どもがこえーからな、覚悟しとけよ」
「うっ……」

 この国の者なら誰もが女性に無謀な喧嘩を売りはしない。顔を顰めびくりと肩を跳ねさせた新人も彼女たちの恐ろしさは身に染みているようで、ちょうど前を通り過ぎる明らかに腕っ節の強そうな近衛兵の一人と目があって肩を窄める姿が滑稽だ。
 びくびくと震える男をカラカラと笑いながら扉の向こうで睦み合う二人の姿に想いを馳せ、今日も己の仕事の誇らしさを噛み締めた。

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