再会


「ディアナ、少しいいかしら」

 静かな時間を控え目なノックが終わらせる。
 この声はエーデルガルトのものだ。彼女自ら訪ねてくるとは珍しい。

「どうし、……先生?」

 扉を開け、声の主を迎え入れたディアナはその後ろにいる教師の姿に瞬いた。
 その人はエーデルガルトの後ろで頷くと彼女の背を押す。

「師が貴方に判断は任せると言うから……」

 珍しく目を逸らしながらそう告げる彼女に首を傾げたディアナは二人に促され部屋を出る。
 暗がりの石の廊下を三人で歩く。
 カツカツと響く足音だけが響く無言が続いたかと思えばエーデルガルトがある部屋の前で立ち止まる。

「ここよ。……中に入れば事情はわかるわ。どうするかは貴方が決めて。すべて許可します」
「…………?」

 扉の左右に立つ二人を怪訝な顔で見つめても答えが返ってくることはない。
 諦めて一人入室したディアナは視界に入った橙色に自分の目を疑った。
 まるで松明に灯るの炎のようなその色は五年間戦場でも見ることがなかった色だ。 

「なんであなたが……」
「そりゃあもちろん、君に会いたかったからに決まってるだろ」

 お決まりの軽口に背後からため息が聞こえる。
 振り返れば締まる扉の隙間からエーデルガルトがやれやれと頭を左右に振っていた。
 ぐっと眉間に刻まれた皴はこの事態の異常さを表していて、ディアナもまったく同じ気分だった。

「シルヴァン=ジョゼ=ゴーティエ……」

 その男は……シルヴァンは、椅子に座らせられたまま手足を拘束されているというのに柔らかな笑みを浮かべる。

「なんだい、ディアナ」

 まるで麗らかな午後のひと時を恋人と過ごす、そんな柔らかな音が返ってきた。

「……あなたとの婚約はとうに破棄されたのでしょう。わたしは帝国について、王国を捨てたのだから。なのに、なぜここにいるの」
「まあ確かに、五年前のあの日を境に俺と君は婚約者じゃなくなった。けど、だからってそれはここに俺が来ちゃならない理由にはならないだろう?」
「はあ?」

 この男は何を言っているんだ。
 理解が出来ない。話にならない。会話になっていない。
 なのに、自分の中に踏み込まれているような奇妙な感覚がして気持ち悪かった。

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