拾われ芥川家
※このお話は、芥川家(龍之介・ふみ・銀)が織田作に拾われていたらと言うIF夢話です。
織田作救済話となっております。
その為、物語が変わっておりますので苦手な方はご注意ください。
「良ければ、一緒に来るか?」
2年前の雨の日。
ポートマフィア下級構成員の織田作之助は、貧民街で肩を寄せ合う3人の兄妹を拾った。
「何だ。織田作、来ていたのか」
織田作が孤児達を預かってもらっている顔馴染みの洋食屋に寄り、太宰と行方が分からぬ安吾とミミックの話していた時だった。
店の扉が開き、3つの人影が店へと足を踏み入れた。
隣に座る太宰は突然の訪問者に警戒からか目を細めると視線をその人影へと向け、
織田作は自身の異能からその人影の持ち主達が誰なのかを分かっていた為、特に警戒する事なく「帰ったか」と呟いた。
織「おかえり。龍之介、ふみ、銀」
織田作と太宰の視線の先には一人の黒髮黒眼の少年と二人の黒髮の少女が立っていた。
龍之介と呼ばれた少年とふみと呼ばれた少女は顔がそっくりだった為、初対面の太宰ですらこの二人が男女の双子であるのが直ぐに分かり、無意識に「へぇ…双子ちゃんだ」と呟いた。
3人が織田作に其々帰った、ただいま。などと言う姿はとても微笑ましいものに見えた。
太宰は、3人を見つめながら隣に座る織田作に「彼等は?」と問いかけると織田作は、「あぁ。俺が拾った孤児達だ。」と言った。
織「こっちが芥川龍之介だ、こっちが妹のふみで二人は双子だ。
そして、ふみの後ろで恥ずかしそうに隠れているのが二人の妹の銀だ」
織田作が説明するのを聞いた後、太宰は「矢張り、織田作は変わっているね」と呟いた。
龍「其の方は、何方だ。」
ふ「織田作がよく話しておる、自殺癖のある友人か?」
太「織田作。君、私の事をどんな風に説明しているんだい?凄く気になるんだけど。」
織田作は太宰の問いかけに「…?事実だが?」と不思議そうな顔をしながら太宰へと言ったのだった。
そんな事を一言二言話した後、太宰の携帯に連絡が入った。
“ネズミが罠に掛かった”と…
連絡を受けた太宰が立ち上がり、少年と少女達の横を通り抜けた時だった。
「命は、大切にしろ」
凛と透き通る様な声に太宰は、目を見開き背後を振り向いた。
織田作と龍之介と銀と呼ばれた少年少女達の瞳が一人の少女…ふみと呼ばれた少女へと視線が向けられており先程の言葉は、ふみが言ったものだと分かった。
ふみは少しだけ振り返るとその黒真珠の様な美しい瞳を太宰へ向けるとスッと目を細めただけで後は何も言わなかった。
太宰は見開いた目をゆっくり閉じ、困った様に笑うと店を出て行った。
織「いきなり、どうした?ふみ」
何故、あんな事を言ったのか織田作がふみに問いかけるがふみは「別に」と返すだけだった。
それが、数日前の出来事だった。
異能犯罪組織「ミミック」の司令官アンドレ・ジイドと対面を果たし、安吾の正体を知った織田作は、駄菓子や玩具が入った袋を片手に洋食屋を訪れた時だった。
織田作は、洋食屋の中に広がる光景に目を見開いた。
困った顔をしている洋食屋の親爺に異能力・羅生門を発動させ黒獣をゆらゆらと揺らめかせている龍之介に孤児達を自分の背後に隠す銀。
そして、何故か天井から糸か縄か分からない透明な紐の様なもので両手を拘束、逆さに吊るされ口にジャガイモを突っ込まれているミミック兵達が数人いた。
織田作は、目の前の光景に訳が分からず柄にも無く混乱してしまった。
とりあえず、何と聞けば良いのかが分からなかった。
織「………どういう事だ?」
やっと出た言葉に龍之介が「僕がお使いから帰るとこうなっていた」と言うと、困った顔をしている親爺に目線を向けた。
すると、親爺も「此奴らがウチを襲撃してきてねぇ」と口を開いたが「気絶しちまったみたいで…後はわからねぇんだ」と言った。
その言葉を聞いた織田作と龍之介は、銀へと目を向けると銀は肩をビクリとさせ目線を逸らした。
その姿に織田作は、銀の名を呼ぶと目線を下に向けながら合った出来事を語り出した。
銀が語った内容は、こうだった。
いつも通り洋食屋の手伝いをしていたふみと銀はお昼時も終わり、少し遅めの昼食を取ろうとしていた。
親爺さんにカレーを装ってもらい「いただきます」と手を合わせ、カレーを口にしようとしていた時だった。
店の扉が勢いよく開き、ミミック兵が突撃してきた。
身なりや手に持つ銃に素早く気づいたふみと銀は親爺さんをすぐ様カウンターの下へ押し込むと自分達もカウンターの下へと隠れた。
降り注ぐ銃弾の雨にカレーが入っていた鍋は倒れ、窓硝子が割れる音が鳴り響いた。
その時、銀には「ブチッ」と何かが切れる音が聞こえたかと思うと気づいたらふみが異能を使いミミック兵を縛り上げ、床に落ちていたジャガイモをミミック兵の口に無理矢理突っ込むブチ切れたふみの姿があったのだという。
因みに親爺が気絶したのは、ミミック兵が銃を乱射した際に壊れた棚に合った醤油(お徳用巨大サイズ)が頭に落ちたせいだと言うことも分かった。
織田作は銀の口から語られた話に耳を疑った。
織「龍之介が異能者と言う事を知っていたが…
ふみも異能者だったのか…?」
そう、織田作は龍之介が異能者と言う事は知っていた。
3人に手を差し伸べたあの雨の日。
龍之介は、警戒から異能を発動させると織田作に牙を向けたからだ。
その時も拾ってからと言うもの、ふみが異能を使う所も見たことも聞いた事もなかったからだ。
龍「ふみは、異能をあまり使わぬからな。
“使うと腹が空く”と言って、貧民街に居た時から殆ど使っておらぬ。」
黒獣をゆらゆらさせながら言う龍之介に銀もコクリと頷いた。
銀「でも、姉さんの異能はとても強い。使い方によっては人なんて如何にか出来る」
織「なんだと?」
龍「ふみの異能・蜘蛛の糸は、異能力を具現化した半透明な糸で今、逆さ吊りにされている者達の様に拘束・切断…そして物や人を人形劇の様に操る事の出来る異能力だ。」
ツンツンと黒獣で吊るされたミミック兵を突き出した龍之介の言葉に織田作は、眉を顰めた。
織「そうか。
ところで、ふみは何処へ行った。」
その言葉に銀と銀の背後に居た子供達が肩をビクつかせた。
織「お前達、知ってるな?何処へ行った。」
気まずそうな顔をしながら銀が口を開いた。
銀「………店を滅茶苦茶にされたしお昼邪魔されて腹立つからちょっと恨み晴らしてくるって…
この人達のポケットに入ってた地図とジャガイモが入った箱を持って…行っちゃった。」
銀の言葉に織田作は、声が出なかった。
龍「あいつの食い物の恨みは怖い…」
龍之介は、静かに呟いた。
先程の出来事を太宰に連絡した織田作は、太宰からの大爆笑の後、別のミミック兵が持っていた地図を手に入れた織田作は、地図に描かれた少し離れた山岳地帯の山あいの古い私有地に赤い{emj_ip_0829}印が描かれており、一言“幽霊の墓所”と走り書きがされている場所へと向かって行った。
雑木林が繁茂する林道を抜けると古びた洋館が見えた。
そして、すぐ横の木に店に居たミミック兵と同じく両手を縛られ逆さに吊るされ口に人参を突っ込まれた恐らく見張りを任されていたであらうミミック兵がゆらゆらと風に揺れていた。
人参を口から出そうともごもごしているが、えずくかえずかないかのギリギリの奥の位置に入れられた人参は、硬く噛む事も吐き出す事も出来ない姿に織田作は少し憐れな目で見てしまったのは、仕方のない事だった。
奥に行けば行くほど拘束され口に硬い野菜を突っ込まれ逆さに吊るされているミミック兵の数は多くなって行った。
織「黒髮の少女が通ったか?」
織田作が吊るされたミミック兵に問いかけると涙目のミミック兵はコクリと頷いた。
織「………食べ物を粗末にするなと怒られたか…?」
何気なく聞いた織田作の質問にミミック兵は、再びコクリと頷くとその時のふみの姿を思い出したのかガタガタと震え出したのを見て織田作は、心の中で手を合わせた。
織田作は、建物の奥へと足を進めながら芥川家を拾った時の事をふっと思い出した。
雨の中、貧民街にふみを中心に肩を寄せ合う様にして雨宿りをしていた3人を見つけ手を伸ばした。
「良ければ一緒に来るか」の言葉に最初、龍之介は警戒の色を見せ、異能力を発動させ片割れと妹を守るかのように立ち上がった。
龍之介の後ろにいたふみも銀を背に庇いながら織田作を睨みつけていたのを織田作は、覚えていた。
なんやかんやあり織田作が芥川家を拾い、住む場所も洋食屋の親爺に借りて数日経った時だった。
店の手伝いをし始めたふみが、遅めの昼食を食べようとしていた処に織田作がやって来たのだ。
成人男性でも其処までは食べないだろうと言う山盛りに盛られた**飯 に織田作は驚きに目を見開いたのを覚えている。
「ふみが食うのか…?」と問いかけるとふみは「そうだが?」と平然と言ってのけたのである。
親爺さんに話を聞くとふみは龍之介の食欲と言う欲を母の腹の中にいる時に全て奪ったのではないかと言う程に食欲旺盛で食い意地が凄いと言う事を知った。
そして、その数日後、店に来店したタチの悪い客が「こんな不味い飯食えねえなぁ!」と料理をひっくり返しクレームを付ける姿を見たふみが「…………食べ物を粗末にするな。」と地の底から鬼が出て来るのでは無いかと言うほど低い声と黒いオーラを出し、クレームを付けて来た客を震え上がらせたのには織田作も冷や汗をかいた。。
今回、ふみが怒ったのも食絡みである事が銀の話で分かっていた。
だが、今回の敵は未来を見通す異能者である。
その為、ふみが異能者だと知っても未来を読まれてしまえば勝てない。
そして、その先には死しかない。
織田作は、持っていた銃を握る手に力を込めると走り出した。
奥に行くと大きな扉が織田作を歓迎するかの様に開いていた。
織田作は、その扉を通り抜け広大で天上の高い舞踏室へと足を踏み入れると織田作は、目を見開いた。
部屋の中央で静かに立つ、織田作が探していた少女・ふみと
異能犯罪組織・ミミックの司令官アンドレ・ジイドが目を見開き、両膝を地面につけていたからだ。
ジ「乃公が………まけ…た?
そんなはず…は…」
自分の身に起きた事が理解出来ないジイドをふみは、じっと見つめるだけだった。
ジ「未来は……読めたはずだ…。乃公を救うのはサクノスケで……
貴君は、死ぬはずだ……」
ジイドの呟きにふみは、眉を寄せると目の前に両膝をつき項垂れるジイドを睨み付けると口を開いた。
ふ「私の未来を貴様が決めるな。」
ふみの言葉にジイドは、ゆっくり顔を上げふみを見つめた。
ふみは、嫌そうな顔でジイドを見つめると「未来は、其奴の気持ち次第で変わるものだ。何時迄も貴様の見た未来が現実になると思うなよ。」と言い放った。
ジ「なら、貴君が乃公を救ってくれるのか?」
ジイドの言葉にふみは、首を傾げた。
ふみにはジイドの言っている意味が分からなかった。
ふ「貴様は、何故死にたがる?」
ふみの問いかけにジイドは、「幽霊だからだ」と呟くと自身の過去を語り始めた。
ジイドは、祖国のため、大義のため、隣に立って戦う戦友のために戦い数え切れないほどの味方を救った英雄だった。
自分は軍人であり、祖国を守ること、自分の育った土地で生きる人々にのために戦うこと、彼等のために死ぬ事が自分でもの天命だと信じた男だった。
だが、仲間だった物に裏切られたジイド達は敵兵の幽霊となり生き延びたが、自分達は戦争犯罪者であり、死んだ人間でありそして、地に堕ちていった。
自ら死ぬ事は軍人である事を否定する事になる。
自分達が何者であるかを思い出させてくれる場所を求め戦場を彷徨う荒野の死霊となったと。
ジイドから語られた言葉をふみと織田作は静かに聞いた。
ジイドは、自身を負かしたふみへと再び視線を向けると、
ジ「その手で乃公の彷徨う魂を救ってくれ」
と願った。
ふ「断る。」
静かな空間にふみの声が響き渡った。
ふみの拒否の言葉にジイドは、「何故だ{emj_ip_0792}」と声を荒げた。
そんなジイドをふみは静かに見つめると口を開いた。
ふ「下らぬからだ。」
ジ「くだら…ぬだと…{emj_ip_0793}」
ふみは、フンッと鼻を鳴らすとジイドを睨みつけた。
ふ「自分は、死霊だと?
死ぬ事が救済だと?
巫山戯るな。
“今を生きている人間”は、“此れからを生きて行こうとする人間”しか救う事が出来ぬ。」
ふみの言葉に織田作は、目を見開いた。
ふ「貴様の話は、全て下らぬのだ。
己にばかり目をやり、
己を変える努力もせず他者にばかり頼るその姿……
酷く滑稽だな。」
16歳の少女の口から出るその言葉が織田作の胸には、何かを感じた。
ジイドは、ふみの言葉に歯を噛み締めると目の前のふみを睨みつけたがふみは動じる事など無かった。
ジ「貴君の様な子供に…何がわかるっ!」
ふ「貴様等の考えが自己中心的な考えだとは、分かる。」
ジ「なら、乃公達は、
如何すればよかったのだ{emj_ip_0792}
如何すれば……乃公達は…」
ジイドは、己の胸の内を叫ぶと再び項垂れた。
そんなジイドにふみは、「その様な考えを捨てれば良かったのだ」と言った。
ふ「その様な考えを捨て、自ら変わろうと努力すれば良かったのだ。
その様に貴様に着いて来てくれる仲間がいるなら平和な場所で身を潜め働き、そして美味しいご飯を食べ、眠り、人に
迷惑を掛けない生きる目標を見つければ良かったのだ。
小さくて下らない目標でもいいから。」
顔を上げたジイドにの瞳から何故か涙が流れていた。
ジイド自身も何故涙が出るのかが分からなかった、
だが、ふみの言葉の何かがジイドの心に響いたのだろうと織田作は、そう思った。
涙を流すジイドにふみは、背を向け歩き出した。
ジ「待ってくれ。」
歩き出したふみをジイドが呼び止めた。
ふみは、首だけをジイドへと向けると「何だ。」と問い掛けた。
ジ「貴君は…何のために生きている…?」
ジイドの問い掛けにふみは、キョトンとした顔をするとふっと笑った。
ふ「家族で毎日、美味しいご飯を食べるために生きている。」
そう言うとふみは、再び背を向け歩き出した。
ジ「“家族で毎日、美味しいご飯を食べるため”か……ははっ…」
“子供らしい、考えだ…。”
そう言うとジイドは、笑った。
その後、太宰からポートマフィア首領・森鴎外が異能特務課より異能許可証を手に入れる為にミミックと織田作を陥れようとしていた事を知った織田作は、ポートマフィアを抜ける事を決めた。
その事を太宰に話すと私も共にと言い出した数日後、二人はポートマフィアから姿を消した。
龍之介やふみに銀、織田作の顔馴染みの洋食屋の親爺は、織田作達の行方を知っていたが知らないふりをして日々を過ごした。
ミミックと言う名を変え、慈善活動を始めたと言う事を風の噂で聞いたが、ミミックの正体がジイドだと知らないふみは「ミミック?何処ぞのポケ●ンの名前みたいだな。」としか思っていなかった。
経歴を洗うため地下に2年潜り、その後、異能特務課・種田長官に紹介された再就職先である武装探偵社に入社した太宰と織田作。
そして、4年が経ち二十歳になった芥川龍之介も織田作の紹介により探偵社へと入社したのだった。
同じく4年経ち美しく成長したふみは以前と変わらず、洋食屋で手伝いをしながら銀と共に年下の孤児達の面倒を見ながら日々を過ごしていた。
太「さぁ、仕事も終わったし今日は、何時もの織田作の行きつけの洋食屋でご飯でも食べようかな。」
椅子に座りながらゴキゴキと首を鳴らす太宰に織田作は「また、来るのか?」と言った。
太宰は、ニコリと笑うと「だってご飯作るのめんどくさいしね。独り身は辛いねぇ」と戯けたように言った。
太「あ、何なら敦くんも来給え!」
太宰の隣で仕事をしていた新入社員の敦は、急な太宰からの誘いに「へぇ{emj_ip_0793}」と声を上げた。
太「敦くんも来給え!織田作の知り合いの洋食屋何だけどね、美味しいんだよ!」
敦「本当ですか{emj_ip_0792}行きたいです!」
太宰の美味しいという言葉に敦は素早く反応し首を縦に振る姿に太宰は満足気に笑った。
敦「芥川は、誘わなくても良いんですか?」
資料室で仕事をしている芥川の存在を思い出した敦は、太宰と織田作に問いかけると太宰が「大丈夫、大丈夫。誘わなくても来るから、いや…帰ってくるからって言った方が正解かな?」と言った。
敦「“帰ってくる?”」
太宰の言葉の意味が分からなかった敦は、首を傾げていると敦の向かいで作業をしていた織田作が「その洋食屋の二階を龍之介は、家族と部屋を借りているからな。」と言った。
その言葉に太宰が「芥川くんは、元孤児でね。織田作に拾われたのだよ。」と言葉を付け足した。
敦「そうだったんですね…知りませんでした。」
織「まぁ、知らないのは、無理もないだろう。
龍之介は、只でさえあまり喋るタイプでは無いからな。」
そう織田作が言うと同時に時計の針は終業時間を差し、資料室から出て来た芥川を含めた4人は、織田作の顔馴染みの洋食屋へと足を向けた。
敦「えぇぇぇぇぇぇっ{emj_ip_0793}芥川、双子なのぉぉぉぉぉぉぉっ{emj_ip_0793}」
洋食屋へと向かっていた4人だったが、太宰の「ふみちゃんは、益々美人になるねぇ。でも、心中を申し込んでいるのに毎回フラれてしまうよぉ…」と言う言葉に芥川が「人の妹に心中を申し込むのは辞めて頂けないだろか。」と言う会話から敦は、「芥川には、妹がいるのか?」と言う話になった。
芥「僕には、妹が2人いる。」
太「1人は銀ちゃんって言う妹で、もう1人は、ふみちゃんと言う芥川くんの双子の妹だよ。」
太宰の口から出た言葉に敦は、驚きのあまり叫んでしまったのであった。
芥「何だ。そんなに僕が双子なのが不思議なのか?」
眉間に皺を寄せながら不機嫌そうに言う芥川に敦は「誰もそんな事言ってないだろ。驚いただけだ。」と言い返した。
織「龍之介、喧嘩するなよ。」
龍「……チッ」
敦「(舌打ちした{emj_ip_0792})」
太「はいはい、もうすぐ着くのだから2人とも仲良くね。
ご飯中の喧嘩は絶対ダメだからね。」
真剣な顔で言う太宰の横で織田作は、無言だったが「その通りだ」と言わんばかりに頷く姿に敦は、不思議そうに首を傾げた。
たわいも無い話をしながら歩いていると、人通りが少なそうな場所に一軒の洋食屋が見えて来た。
店の姿は見えるが少し離れている距離なのに、微かに香る** の匂いに敦の腹が鳴るのが分かった。
店が見えてから数分も経たないうちに店の前に到着し龍之介が手慣れた様に店の扉に手を掛けた。
太宰も扉に手を掛け中に入り敦も続いて店に入ろうとしたのだが、背後にいた織田作に名を呼ばれた事により敦は店に入る前に立ち止まり、背後の織田作へと振り向いた。
敦「?どうしたんですか?」
敦の問いかけに織田作は、答えなかった。
織田作の異能力・天衣無縫は、5秒以上6秒未満の未来を予知する異能であった。
そのため敦が店の扉に手を掛けた瞬間、織田作の異能力が働き、とある未来を見せたのだ。
敦「織田さん、どうしたんですか?何かありましたか?」
目の前で不思議そうに織田作を見つめる敦に織田作は、ふっと笑うと「何でも無い」と言った。
そして、敦に
織「ふみを宜しくな。
年は近いが俺が育てた大切な“娘”だからな。」
と言った。
織田作の言葉の意味が理解出来ない敦は、「はい?、分かりました…?」と理解出来ていない頭でとりあえず、織田作に返事をした。
前へと向き直り、店の扉を開ける敦の背中に織田作は、再び微笑んだ。
織田作が見た未来は、この扉を開けた敦が大切な“娘”に恋をする未来だった。
織「こう言う、未来を予知出来るのも悪く無いな。」
織田作は、そう呟くと店の扉を開けたのだった。
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