突然だが1年前のある出来事を聞いてほしい。

当時私は高校1年。頭があまり良くない私は都内でも偏差値が低いと有名な高校に入学した。
校則なんてあってないような無法地帯。
派手な髪色に規定に反いた制服を着こなしチャラついた男女達。そこらかしこから聞こえる下品な笑い声、いつも通り騒がしい教室。
そんな喧騒の中、自分の足が長く見えるように改造したら短い制服のスカートのポケットが震えた。
ポケットからスマホを取り出し届いた一通のメッセージを既読して、

「今日早退するわー」

と派手なギャルの友人2人に伝える。
じゃがりこを加えながらスマホ片手に駄弁っていた2人は「え、なんで?」と私をみた。
その2人の爪にはキラキラ可愛らしいネイルが施されている。

「んー?パパが会いたいんだってさ、しかも制服で」

そういうと2人は「あ〜パパね」と納得した表情をする。
「もしかして新規?」
「うん、しかもIT企業?の取締役」
「え!?!?マジ?ちょー羨ましんだけど〜!?!」
「やばぁカモじゃん!私らにもしょーかいしてよー」

紹介しろ紹介しろとうるさい2人に変な人じゃなかったら回すね、と口約束をしてこの日私は学校を早退した。


私は派手な友人と相違ない格好で、化粧を直し待ち合わせ場所でスマホを弄って待っていた。

もちろんこれから会う “パパ ”というのは血縁関係にあるお父さんの事ではなくて、全く知らない赤の他人のおじさんの事を指す。
所謂パパ活というやつで、知らないおじさんと食事に行ったりデートしたりしてお金を援助してもらう行為のことである。
パパ活は援助交際とは違って肉体的関係は持たず、ただおじさんとお話したり食事をするだけでお金を稼ぐことができる。
しかもその相手が羽振りのいい人だと数時間食事をして適当にお話するだけで数万円稼ぐことが出来るので、普通にせっせとバイトするよりもこっちの方が労力を使わず楽してバイトの数倍稼げたりする。
身近な友人はパパ活、もしくは援助交際という世間一般から見たら不埒な行為をみんな普通にやっている。
私の周りの人間は中高年のおっさんから金を毟り取ることになんの罪悪感もなくむしろ、カモとしか見ていない。
この時の私も、パパ活用に登録した出会い系アプリで知り合ったIT企業の取締役とかいう羽振りが良さそうなおじさんと繋がりを持てたとことに舞い上がっていた。格好なカモだと舐めていたのだ。
だから、この時わたしは油断していたし完全に相手を見下していた。
そう、見ず知らずの異性は警戒するべきだという本来持つべき危機感が完全に欠落していたのだ。


「あっ、あの、、もしかして










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