「いらっしゃいませー」

元気な店員の声が響き渡る店内。
大江戸スーパーのお菓子売り場の一角に彼はいた。

「銀さん、こんにちは!」

話しかけてみる。
くるくるの天然パーマをがしがし掻きながら此方を見下ろす彼は、いつもの気怠げな表情。

「おお。何?お前もお菓子買いに来たの?」
「え、銀さんもですか?」
「おう。見てみろよ、これ。綿菓子。こんなん売ってんのな。初めて見たわ。」
「うわぁ!ホントだ!あたしも初めて見ました!美味しそう!!」

彼は手に持っていたスーパーの籠から、小さい袋に入った綿菓子を自分の顔の横に持ち上げる。
そんな小学生みたいな彼が、とても好きだ。


ふふふ。

笑みが溢れる。
すると、彼は何笑ってんだ、と少し怒る。
その時間がまた堪らなく好きだ。

「あ、あたしも綿菓子買おうかな。」
「お?何、買ってほしーの?買ってやらねーからな。ぜってー買ってやらねーからな。」
「誰も買ってくださいなんて言ってませんよ。このくらい自分で買います。」

あたしの買い物籠に綿菓子が追加される。
牛乳、レタス、カレールー、卵に追加される綿菓子は、寮に入ってきた新入りさながらにちょっぴり浮いていた。
彼の買い物籠を見ると、お菓子お菓子お菓子の下に酢昆布と卵のパックが3個ほどと、いちご牛乳がちらりと覗いていた。

ふふふ。

また笑ってしまった。
例のごとく怒られる。



なんで、笑ってんの?



それはね、貴方が愛おしいからですよ。




2015/11/27
スーパーでばったりシリーズ@銀さん




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