「いらっしゃいませー」

元気な店員の声が響き渡る店内。
大江戸スーパーの野菜売り場の一角に彼はいた。

「土方さん、こんにちは!」

声をかけてみる。
彼は黒の前髪からいつもの鋭い目を覗かせて、此方を振り返る。

「何だ、お前か。」
「すみません。あたしでした。土方さんもスーパー来るんですね。」
「あ?来ちゃ悪りーかよ。」
「いいえ、悪くないですよ。自由ですからね。でも…似合いませんね、買い物籠。」

どう見ても、その顔に買い物籠は不釣り合いなのだ。
目は鋭く眉間に少しの皺があって、真選組の制服を身に纏って、刀を差してる、あの彼が。
買い物籠をぶら下げている。
可笑しい。
可笑しくて笑ってしまいそうで、笑って仕舞えば怒られるのは目に見えていて。

「おい、笑ってんじゃねーよ。」
「わ、笑ってないで、すよ?」
「もう笑い堪えきれてねーんだけど。逆にむかつくんだけど?」

ああ、やっぱり笑いを堪えるのはあたしには無理です。

「ごめんなさい。それより、何買いに来たんですか?マヨネーズは向こうですよ?」
「あ?俺がマヨネーズばっかり食ってるみたいな言い方すんじゃねーよ。野菜見てんだよ。」
「え、野菜も食べるんですね。」
「おい。てめぇ舐めてんのか。マヨネーズに合う野菜買いに来てんだよ。」
「結局マヨネーズメインじゃないですか。」

やっぱりマヨネーズじゃん。
最強のマヨラーを目の前にして、あたしは今度屯所に行く時は、差し入れに業務用マヨネーズを買っていこうと心に決めた。

「マヨネーズ舐めてんじゃねーぞ。今度マヨ定食作ってやっからマヨネーズ持って屯所来い…って、お前はさっきから笑いすぎなんだよ。」


笑いすぎですか?
そんなに笑ってますか、あたし。
気持ち悪いですね。
ごめんなさい。
でも、頬が緩みっぱなしで締まりません。
こっちが助けて欲しいくらいです。


なんで笑ってんだよ。



それはね、貴方に恋しているからですよ。



2015/11/27
スーパーでばったりシリーズA土方さん



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