「銀ちゃん今週のジャンプもう読んだ?」
「あ!!!!」
「うっ!なに!?びっくりした〜」
「忘れてたァァァ!!今週依頼入っててすっかり忘れてたァァァァ!!俺としたことが…」

私の彼氏は坂田銀時。
この歳でジャンプがないと生きていけないダメ男です。

「へっへーん。そんなことだろうと思って……ジャーン!!」
「お、マジでかァァ!!?」
「ふふっ。マジだよ。惚れ直した?」
「惚れ直した!!マジで!!」

でも、ジャンプ買ってきたくらいで、こんなに喜んでもらえると悪い気はしません。
ジャンプごときで、こんなに一喜一憂する男の人はきっと少ないと思います。
女の私には正直よく分かりません。

「銀ちゃん、お金。」
「え、買ってくれたんじゃねェの?」
「買ったけど、奢るとは言ってないよね。」
「何だよケチくせーなァ。いいじゃねぇかよ。ほら、こないだアレ。アレ買ってやったろ。」
「あれってアレ?アレは、銀ちゃんがたまたまパチンコで勝ったからって買ってきてくれただけで、私がお願いしたわけじゃないもん。」

アレはアレでしょ。
便利な言葉です。
“アレ”だけで通じる話がここ最近増えてきてて、実は嬉しい。
アレどこだっけ?
アレ取ってよ。
アレ覚えてる?
認識を共有するってこんなにも幸せなんだって彼と出会って初めて知りました。

「それなら、俺だってお願いしたわけじゃねェよ?」
「そ。じゃあ、あげない。」
「まっ、待てってオイ。落ち着けよ。何も要らないって言ってんじゃねェんだ。またパチンコで勝ったら返すから。そうだ、そうしよう。パチンコで勝ったらすぐに返す。だからそれまではツケといて。…ね?」
「ね?って可愛くない。パチンコっていつも負けてくるじゃん。たまにしか勝たないじゃん。お仕事で儲けてきてよ。」
「分かった分かった!お前がそんなに言うなら、仕事いつも以上に頑張るから!」

たかがジャンプごときで喧嘩はしたくありません。
彼には、されどジャンプと言われるでしょうが、私にとってはたかがジャンプなのです。

「…もう。そこまで言うなら、はい。あげる。」
「マジでか!さっすがジャンプの女神様!」
「え?ジャンプの女神様?なにそれ?銀ちゃんの女神様ではないんだね。」

ジャンプに闘志を燃やしてどうなるものでもありませんが、されどジャンプなのです。
さっきと言ってることが違うじゃないかって?
コレはコレ。アレはアレです。
しかし、彼はこういう面倒くさい女は嫌いです。
直接は聞いたことないけど、長年連れ添ってると何となくわかります。
彼は面倒くさい女は嫌いです。

「お前は俺の女神じゃねェよ。」
「あっそ。じゃあ何なの?」




「決まってんだろ。俺の女。」




2016.6.21
2016.12.3 加筆修正
銀さんでSS「ジャンプ」



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