まるで、生まれた時からそこに在ったように、自然に絡まる指と指。
温もりを求めるように、彼の指がもぞもぞと動く。

「銀ちゃんの手、冷たーい。」

私の手もきっと冷たい。
それでも、銀ちゃんは何も文句を言わない。

「銀ちゃんの手、おっきいねー。」

「お前の手が小っちぇんだ」と返される。
いや、きっと、銀ちゃんの手が大きい。


軽い雪が、はらり、と舞ういつもの通り道の中で、私たちはふたり。
ふたりは、ひとつ。
手を繋いで歩くなんて、そんな恋人みたいなこと、恥ずかしいに決まってる、と思ってたけど、可笑しい。恥ずかしいよりも、嬉しいが勝ってしまっている。

「おい、あんまりはしゃぐんじゃねーぞ。」
「どうして?」

銀ちゃんは、私がはしゃぐのを良しとしない。でも、はしゃぐこと自体が悪いと言っているわけではないのだ。なにぶん、私がはしゃぐと、ろくなことが起きないから。

それは例えば、はしゃぎ過ぎて、私が転けたり。
それは例えば、はしゃぎ過ぎて、私が人にぶつかったり。
それは例えば、はしゃぎ過ぎて、後で風邪を引いたり。

どれも今まで実際に起こっていることなので、それを言われて仕舞えば、何も言葉を返せない。何しろ、全部、銀ちゃんが後始末をしてくれているのだから。

「まーだ、分かってねェの?」
「分かってるよー。そんなに悪戯な顔しないで。私もそこまで馬鹿じゃないんだから。」

銀ちゃんのこういう時の顔は、変に色っぽいから狡い。
そして、そう思われていることに、気づいていない風でいて、ちゃっかり気づいているから、タチが悪い。

身体は寒いのに顔だけが熱い。
赤くなった私の顔を覗き込むようにして、銀ちゃんはケラケラと笑った。
銀ちゃんは、人をからかうのが好きだ。困っている人を見て、面白くなって楽しくて、ケラケラ笑うのだから。
でも、そんな銀ちゃんも嫌いじゃない。
銀ちゃんが笑っていると、何故だか、ぼんやりと提灯が灯るように、心がぽかぽかしてくるから。

そういえば、この話をいつの日だったか本人に話したことがあった。
銀ちゃんは、それが恋だと教えてくれた。

私は銀ちゃんに恋をしている。
そんなことは、遥か昔っから分かりきっている。
舐めないでほしいものだ。
私もそんなに馬鹿じゃない。





2019.01.18
「指の隙間に、恋」


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