あさゲと朝チュン

目が覚めたら知らない部屋だった。動きの鈍い頭で最後の記憶を辿る。ええと、昨日は…、誰かの誕生日だかで、お祝いと称して宴になって、たくさんワインを飲んだ気がする。ぐわんぐわんする頭を何とか持ち上げて辺りを見渡したところで、部屋の持ち主であろう人物と目が合った。
「なまえちゃん起きた〜?」
「あれ、ここゲンの小屋…?」
「何も覚えてないの?昨日あんなに熱い夜を過ごしたのに〜」
「!?」
残念そうな顔で衝撃的なことを言われ、まだ働くことを拒んでいる自分の頭を必死でフル回転させるも、何も思い出せない。まさかそんな、仮にも初めてだと言うのに…。ないと信じたいがそれを否定する記憶も出てこない。さっきまでふわふわしていた身体から血の気がさーっと引いていくのが分かる。
いや、待って。自分の身体を見下ろせば、多少着崩れてはいるが、昨日のままちゃんと服一式着ている。
「いや、してない!絶対してないよね!?嘘だ!」
「あらら〜やっぱりバレちゃった?なまえちゃんってばマジ焦り顔だったよ。一瞬信じたでしょ?」
「ほんといい性格してるよね」
安堵と、呆れで思わずため息がでた。嘘と軽口でみんなを楽しませるのがゲンだけど、こういう冗談は心臓に悪いからやめて欲しい。
「まぁ俺はなまえちゃんとならいつでもウェルカムだけどね」
と、いつの間にか近づいていたゲンに後ろから耳打ちされて、ぞわりとした感覚が身体を走る。思わず振り返ると、目の前にゲンの顔があり、やけに熱っぽい視線を送られてる事に気づいて心臓が跳ねた。
「かっ、からかわないでよ…!」
「めんごめんご。でも、今のはジーマーだよ」
言葉は謝っているが、口調はあまりにも軽い。くつくつと笑いながら言われても、全くもって信憑性がない。本人もそう見られているのを分かっていてやっているのだから、たちが悪い。完全に遊ばれている。
「もう、帰る!」
これ以上ここにいてもからかわれるだけだと思い、自分の家に戻ろうと立ち上がった瞬間、視界がぐらりと揺れ、地面を蹴ったはずの足から力が抜けて、布団に戻ってしまった。完全に二日酔いだ。
「とりあえずお水飲んだ方がいいよ、はい」
「ありがとう…」
怒って帰ろうとしたのに、むしろ世話を焼かれてしまって気まずい。ゲンを真っすぐ見れなくて、思わず視線を下に向けたところで、自分が布団で寝ていたことに気づいた。このストーンワールドでは客人用の布団なんて用意している家なんてない。3700年前だったら布団とも呼べない様な布きれは、私ひとりが寝ればそれでもういっぱいなのは明らかだった。もしかして、私に布団を譲ってくれた?確かめようと口を開いたが、ゲンの言葉に先を越された。
「それに、これに懲りたら記憶なくすまで飲んじゃだめだよ」
「うっ…はい」
「昨日のなまえちゃん、抱き付き魔になってたんだから」
「それは…全然覚えてない」
「俺がいつもお世話できるわけじゃないんだからね」
先ほどまでふざけた雰囲気から一転して、真面目に諭されてしまうと居たたまれない。思わず背中を丸くして、布団の上で小さく縮こまってしまった。そんな私にゲンは優しい口調で気遣ってくれる。
「とりあえずもう少し休んでいったら?」
「それは、仕事が…」
「俺のもなまえちゃんのも、午後からにしてもらったよ」
「何から何まで…面目ない」
なにそれ、とケラケラと笑われる。いやだって、お酒を飲みなれてはいないとはいえ、ここまで醜態をさらすなんて、恥ずかしすぎる。茶化さないとやってられないよ。
「じゃあさ、お世話したお礼に、今度1日付き合ってよ」
「付き合う…?」
「マジックのタネの花を摘みにいくの、手伝って」
「それぐらいなら」
むしろ、そんなことでお礼になるのだろうか。もぞもぞと返事をする私とは反対に、「約束ね」とゲンは妙に機嫌が良さそうだ。何か裏があるのでは?と勘ぐってし、疑り深い目で見つめてみても暖簾に腕押し。そんな私の様子を見て、更に楽しそうに目を細めていて、なんだかこっちの気が抜けてしまう。優しいのか意地悪なのか分からない。こちらの真意はすべてお見通し、みたいな顔をしているのに、向こうの真意は一切悟らせない。のらりくらりと掴みどころがなくて、嫌になる。適うわけないなと諦め、考えることをやめたら急に眠気が襲ってきた。
「うぅ、、眠い。とりあえずもう一回寝させて」
「うん、おやすみ。なまえちゃん」
こちらを見つめる目が妙に優しげで、気恥しい。誤魔化すように被っていた毛布を引き上げて顔を隠せば、完全に眠気に飲まれていった。うつらうつらする意識の中で、何となく頭を撫でられた様な感触が残った。これは夢が現実か、考える暇もなく眠りに落ちた。

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私お酒のお話ばかり書いている気がする。

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