ゲンに助けられる

現パロ・大学同級生の設定


ずっと女子校育ちで、親を説得して系列の大学ではなく外部の大学に入学してようやく男の子と接する様になった。その中で、たまに男の子が苦手だなと思う時がある。仲良い子もいるんだけど、知らない人や初めましての人が多い時、特に飲み会の場では。

「なまえちゃんかわいいね?今日来てよかったわ」

えーありがとう、なんて返すけど、それ以外に何て答えていいか分からない。そんなことないよって否定したら「いやいや、ほんとに!」とか返されてやりとりがループするだけだとこれまでの経験で学んだ。
どうしよう。仲良い女の子達は違う卓で盛り上がっていて、私はハジメマシテの別大学の男の子たちに囲まれてしまった。

持ち上げられるように話されると何を言っていいか分からなくなり、場を濁す為にちびちびとグラスを口に運んでいたら
「お酒強いの?」
と誤解を招いたみたいだ。いやただのカシオレですけども。

「全然。こういうのしか飲まないし、普通だよ」
「それ強い人の台詞〜!」

返し方を間違えた、と思った時には遅かった。いける口だと思われたのか、またやんやと盛り上がる周囲に反応に困る。

「じゃあこっち飲んでみる?」

勧められるお酒をあいまいに笑って断る。
こういう雰囲気になった時、どうしていいか分からない。以前友達にそれを言ったら「そんなのは適当に流せばいいじゃん。そしたら普通に話せるよ。しつこかったら逃げればいいし」。そんな簡単に言われても、やり方が検討つかない。
私も、うまく会話を持っていけず受け身になっている中で自分を棚にあげて申し訳ないけど、これ、皆は楽しいのだろうか。

あからさますぎるけど、友達のアドバイスの通りお手洗い行くふりして逃げようかな。戻ってくる時にさりげなく別テーブルに合流しよう、なんて算段を練っていたら、ふと後ろから「は〜い。ちょっとお邪魔するね」と声が聞こえたと思ったらいつの間にか距離が近くなっていた隣の男の子の間に影が割り込んできた。

割り込んだ影の正体は浅霧くんだった。とても仲いいわけじゃないけれど、知っている人の登場に私は少し安堵した。
「あ〜、浅霧…」
私とは反対に、僅かに顔を曇らせた男の子達も、浅霧くんの流れるようなトークであっという間に楽しそうに盛り上がっていた。

浅霧くんはすぐに周りの人を把握して、うまく場の空気を掴んで操るのが上手いと思う。授業のグループワークでも浅霧くんがいるチームはいつも成績トップで、皆がうちらがんばったね!って納得と達成感を得られているようだった。それも全員。

私も、さっきまでの気まずい雰囲気から一転、なんだか普通にこの場を楽しめてきていた。さっきまでちょっと面倒な人たち、なんて全員同じくくりで見てしまっていた男の子たちも、ちゃんとひとりひとりの個性が見えてきて、ああ普通の男の子だ、なんて少し反省しながら思った。

「浅霧飲めよ〜」
「なまえちゃんも、次行こう」
盛り上がると今度は飲む方向になるのは、学生の性か。だんだん出来上がってきた皆はお酒を煽り始める。

「いや、私はー」
断ろうと口を開いたその時
「んーこれいただきっ」
お猪口をさらっと取って飲み始める浅霧くん。そのまま一気に飲んで、また周りが盛り上がる。その後もやんややんやと盛り上がり始めた私たちのテーブルに他のテーブルの人たちが気づいて、「わ、やばい」と言い始めた。盛り上がっている様を動画に摂り始める人もいて、映りたくないな、と思わずテーブルから離れた。

「お、なまえおつかれ〜大変だったね」
「気づいてたんなら助けてよ」
「ごめんて」

悪びれもなく笑いながら謝る友人を小突いたけど、私も逆の立場だったらよっぽど酷くなければ放置するだろうし、まぁそんなもんだろう。

飲み会は終わり、一旦お店の前に集まる。テンションの高い子たちはまだ騒ぎながら二次会行く人〜!と大きな声で呼びかけている。

「俺明日早いからパス〜」
浅霧くんが高らかに宣言すると、ふざけんなテメーとかなんとか言われてヘッドロックされていた。男子は馬鹿だねぇとそれをみてる女の子たちは笑う。
2次会に行く組と帰る組に分かれて、三々五々に散る中、私は自然と帰る女の子たちの集団に入ったけど、ふと後ろ髪を引かれるような懸念が浮かび、
「ごめん、ちょっとコンビニ寄ってから帰る」
と言葉を残してその集団を後にした。

コンビニで買い物を済ませてお店の前に戻れば、目当ての人物を見つけた。

「お水、いる?」
「えっ…!?なんでなまえちゃん…⁉」

キャッチや酔っ払いの喧噪の中、さっきまでいたお店の少し横、通りの邪魔にならない場所で浅霧くんが蹲っていた。その顔は赤いのと青いのと半分という感じだ。

スカートが床につかないように折りたたみながら横にしゃがむと浅霧くんはぎょっとした顔をする。そのまま無言でペットボトルの水を差し出せば何も言わず受け取ってもらえた。

「あ〜、メンゴ、かっこわるいところ見せちゃったね〜」
「ううん、今日の浅霧くん…かっこよかったよ」

へらりと顔色が悪いまま笑った浅霧くんは、私の言葉に僅かに目を見開いたと思ったら、気まずそうに顔を逸らされてしまった。
分かってる、人に気付かれないように気遣いをするのが浅霧くん何だと思う。こうやって直接言うのは、彼の気持ちをちゃんと汲めてない行為で、気づかないふりをするのが良い女なのかもしれない。

それでも、お礼くらい言わせてほしい。

「ありがとう、すごく嬉しかった」
「ん〜なにが?」
「もっとチャラチャラした人かと思ってた」
「ドイヒー」

案の状気づかない振りをして、顔を覆って泣く真似をする浅霧くんに思わず笑みがこぼれる。

「俺も」
「ん?」

声に反応して浅霧くんの方を見れば、彼は顔を伏せたまま言葉を続ける。

「なまえちゃんのこういうところ好きだよ」

「……へ」
無意識に間抜けな声がでてしまった。言われたことの意味を飲み込むのに、その言葉を頭の中でぐるぐると繰り返してようやく理解した頃には、私の顔にも熱が走っていた。

「…やっぱりチャラチャラはしてた」
「ふふふ」

絞り出した声は思ったよりか細くなってしまって、なんだか悔しい。
そんな私の反応を見て楽しそうに笑う浅霧くんに、でもそっちだってさっきより耳が赤くなってるよ、とは指摘しなかった。

それを指摘して、私の顔も真っ赤になっていると返されてしまったら、困る。
お互い、お酒に酔っ払っているんだ、そう自分に言い聞かせて、お互いの熱が下がるまで少しの間何も言わずに喧噪の中並んでいた。

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