双子、特に侑君は仲良くなったら距離感は近いと思う。他人には割と冷たいところがあるけれど、仲間と判断した人には人情深いというや、子供っぽい故の素直さがあるというか。
「顔が、顔が近いよ」
「?そうすか?すんません」
「いや、いいんだけど」
勘違いされると面倒なんだよ。北君とお付き合いさせてもらっていて、北君を慕っている後輩ともつながりができて、私のこともそれなりに慕ってもらえている、のはとても嬉しい。でも、それがこの学校で一番有名な双子となると、目立って仕方ない。
好きなお笑い芸人の話で盛り上がっていたら、何故か目の前に顔があって焦ってしまった。整った顔してるよね、ホントに。1つ違いの年下とは思えない。こりゃ皆が騒ぐはずだと思っていたら「なまえさんは顔見過ぎです」と言われて自分が侑君の顔を見つめていた事に気づいた。
「ごめん。綺麗な顔やなと思って」
「…真顔でそういう事言うのやめてもらえますか」
言われ慣れているだろうし、いつもの自信家なノリで軽く流されると思っていたのに、ほんのりと耳が赤くなってるのを見て可愛いところがあるじゃ無いか、と思った。
「まぁ北君の顔の方が好きやけど」
「知っとります!つか比べんでください!」
双子が北君に適わないと思っているのは知っていて、つい笑ってしまった。性格が真逆なのに、北君と双子、お互い尊敬し合っているところが良い関係だと思う。ごめんごめんと若干拗ねた侑君を慰めていたところで、北君の声が聞こえた。
「なまえ、待たせたな。終わったで」
「お疲れさま!」
顧問の先生に呼ばれていた北君の用事が終わったみたいだ。今日は私も部活があるから、一緒に帰る約束をしていたのだ。
「お前らもあんま駄弁ってないで、早よ帰れよ」
侑君や治君など、残ったメンバーに声をかけた北君と体育館の出口まで並んで歩く。
「なぁ」
「ん?」
「…」
どうしたの、と続きを促すも歯切れが悪い。いつも迷いなく話す北君にしては珍しい。
「侑と距離つかすぎん?」
「そう、そうなの!北君もそう思うよね?ファン怖いからやめてほしいんだよね」
北君からそれとなく言ってくれると助かるんだけど、と伺うように見上げたら、またもや珍しく何とも言えない顔をしていた。いくら主将とはいえ、そういう事は言いづらいのかもしれない。無理言ってごめんね、と口を開く前に、北君の言葉にさえぎられた。
「…そうやのうて」
歯切れ悪く、目線を逸らしながら言う。
「彼氏おるやろ、ここに。他の男にあんま近づかんといて」
「ひぇ」
「どういう反応なん、それ」
少しむすっとした北君に慌てて否定する。
「いや、北くんもそんなん思うんだなって思って」
「当たり前やろ」
「当たり前、当たり前…」
口の中で反芻する。
「そうか、当たり前かぁ」
「なんや、急に」
「いや、私北君の彼女なんだなって思って」
と自分の中で腑に落ちた結論を声に出せば、無意識だったそれが形作る。うわ、顔が熱い。
「なんやそれ」
前から俺の彼女やろ、と笑う北君に、あぁこの笑顔を隣で見る権利があるのか。とこの上ない幸せを嚙み締めた。
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「この男前と5センチの距離でも平気なのに、北さんとは30センチ離れてあれって…。なんやこの敗北感」
「中身が圧倒的に負けとるからやろ」
「なんやと!?」