嫁に甘い北さん


*嫁は洋服のデザイナー設定(自分が詳しくないので適当ですみません。雰囲気で読んでください)

「なんでこんな散らかるん」
「ほんまごめんな〜!ちょうど終わったところ!今から片付けるから!」
家に帰ったら、ダイニング兼キッチンに紙やら布やらが散らばっていた。足の踏み場もなさそうなのに、ずっとこの状態なのか、どこに何が置いてあるのかは把握しているようで、下を見ずに上手く避けて歩くところはすごい、と妙なところに関心してしまった。
「な、な、これ見て?どう?」
専門的なことは分からんから、と毎回言うのに懲りずに感想を求められる。聞いている割に本人は満足気にデザインが書かれたそれを見つめている。
「綺麗、やな。色も形も、結構遊んどるのに、最初からひとつみたいに、まとまっとる」
「せやろお」
自信たっぷりににこにこと言うなまえにひとまず安心した。納得できる作品ができていなかったら、この後何時間でも悩み続けていただろうから。そうなっていたら、更にダイニングルームが悲惨なことになっていたはず。
「飯は」
「ごめん、何もしてない」
「ほな俺が作るわ」
「ええの!?あ、一緒に作る?」
「それはええから。先に片づけ終わらせぇや」
ぱっと顔を輝かしてキッチンに一緒に向かおうとしてきたが、それより何よりこの煩雑なダイニングテーブルを何とかして欲しい。
「はぁい」
間延びした声に大人しく片づけに向かったのがわかる。夕飯を作ろうとしたが、まだ昼の洗い物が残っていることに気づいてため息がでる。こちらの洗い物が終わったころ、後ろで片づけていたなまえもひと段落ついた様で、手元を覗いてくる。
「夕飯なに作るん」
「肉じゃが」
「え、めっちゃ嬉しい。やったー!」
とテンションの高い声とともに、後ろから抱きしめられる。こっちは包丁持ってるというのに。文句を言おうと口を開いたところで、なまえの言葉に先を越される。
「あんなぁ、話があるんだけど」
嫌な話だ。そう直感して包丁を置いた。言いづらい事があるとこうやって顔を合わせないで話しかけてくるところは、正直好きじゃない。
「今回のが評価されて、もし上手くいったらパリの展示会に参加できるかもって」
「パリ」
「事前の打ち合わせとか準備とかあるから、1ヶ月半ぐらい、行くかも。まだ決まってないけど」
抱きつかれていた腕をほどく様促せば、なまえは大人しく従った。後ろを向いて、なまえと正面から向き合う。
「ええよ。つうか、俺に反対する理由ないやろ」
「その間家事とか、畑のお手伝いできないし…」
「居てもあんませんやろ、お前」
「うっ…」
気まずそうに目を逸らすなまえは、もごもごと何かまだ言いたげだ。視線で促せばしぶしぶといった様子で口を開いた。
「いや、また信介のお仕事周りの人に色々言われちゃうかなーって」
あそこの嫁は旦那支えんとほっぽり歩いてる、とかなんとか。と言われて、言いたいことに合点した。
「気にせんでええよ。言わしとけばええ。何か言われたらちゃんと説明しとるし。あの人らの時と時代が違うんや。なまえはなまえの仕事してるんやから、後ろめたく思う必要ないやろ。胸張りや」
「ありがとう」
今度は正面から抱きしめられ、照れ隠しか頭をぐりぐりと胸に押し付けられるから、そっと抱きしめ返して頭をなでる。
「あ〜ありがとう。めっちゃ愛してる。いつか養ったるから待っててな」
「勝手に俺から仕事奪うな」
と言いつつ、この仕事に生きてる嫁ならいつか実現してしまいそうで怖い。なまえが自分のやりたいことに思う存分打ち込めるよう、せめて生活の地盤と帰ってくるところは作ってやらないと、と決意を新たにしたところで、俺も大概嫁に甘いな、と思った。



***
農家の嫁なんて旦那支えるの当然、家族ぐるみの付き合い当然って感じの中、自分たちのスタイルを貫く北夫婦。
北さんの彼女、しっかりしたお嬢さん(派手じゃないけど見た目きちんとしてて、言葉遣い丁寧で、気立のいい、日常を丁寧に生きる地に足のついた子)と言うのが一般的な彼女像だとは思いつつ、双子みたいに自分と別のところ突出してる人を、自分とはスタンスが違うと割り切りつつ眩しいと素直に思える人だから、自分に上手くハマるできた女の子はもありだけど、自分に無い良い所を持つ人を好きになる未来もありそう。北さん自身は冒険する人じゃないし自分ではしたくないと思うけど、する人を見るのは心躍るし、助けたいと思う人なのではないかなと思って才能がある芸術家肌のバリキャリ嫁を応援していたら死ぬほど美味しいなと思って書きました。どや、俺の嫁すごいやろ!嫁の方が稼いだとしてもそんなんでプライドぼろぼろになる様な小さい男じゃないです。北さんは。

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