熱が出た。タイミングの悪いことに、親が不在の日だった。朝担任の先生に電話で休む連絡をした後、そのままベッドに戻って死んだように眠った。
次に起きたのは15時になってからだった。心配した友人たちからメッセージが届いていて嬉しくなる。早速返事を返すが、正直スマホの画面を見るのも結構しんどい。メッセージの中に、幼馴染からのものを見つけて、ちょっと気が重くなった。真面目な彼には普段の生活が疎かになっているからだ、と怒られる気がする。でも、画面で光るその数字は、メッセージが複数来ている事を示していて、無視したら後が怖いことになる予感しかしない。恐る恐るトーク画面を開くと、こんなメッセージが並んでいた。
【8:25 授業、始まりますよ。何してるんですか?まさか寝坊してないでしょうね】
【8:40風邪でしたか…体調管理もできないんですか?日々の生活をちゃんとしていないからです】
【9:55 今日、ご両親いない日ですよね。食事はとっていますか】
【12:30 無事なら返事してください】
思った以上に口うるさい内容で、ただでさえ風邪で落ち込んでる気分が更に沈む。でも、付き合いの長さ故、この面倒な幼馴染がかなり心配してくれていることは分かったので、「心配かけてごめん。ご飯はまだ食べてないからなんとかする」と返事を打った。
メッセージを見て自分が朝から何も食べてないことを思い出した。取り敢えず水分は取らなきゃ、とベッドの横に置いたペットボトルの水でのどを潤すも、台所まで行って何か用意する気力は湧かなかった。お腹が空いている様な気もするし、何も口にしたくない気分でもあるし、動くのがだるい自分もいて、どうしたものかと考えている内に再び意識がベッドの中に沈んだ。
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目が覚めたら目の前に圧のある幼馴染の顔があって一瞬固まった。ひとは驚いた時には声が出ないらしい。
「ひょう、が」
幼馴染の名前を呼ぶが、起き抜けの為かかすれた声は、上手く形にならなかった。
「無事なようですね。メッセージぐらい返したらどうですか」
「え、あれ、学校は?」
意識がじわじわ覚醒してきて、取り敢えず体制を整える。確かに幼馴染で、彼は数え切れないぐらいこの部屋に来たことがあるとはいえ、それは昔の事で、最近は疎遠になっていたし、今の自分はパジャマ姿。このシチュエーションに恥ずかしさを覚える。とはいえ、そういう気遣いがこの幼馴染にあるとも思えない。
「とっくに終わりましたよ」
窓を見上げると、確かに日は落ちかけていた。そんなに寝てしまっていたのか、と自分にびっくりしていたら、最悪なタイミングでお腹がなった。
「…」
「何も口にしていないんですか」
「う、うん」
「あのメッセージの後、ずっと寝ていたんでしょう」
首肯すると彼は思むろにため息をついて、仕方ないですねと呟いた。
「何か適当に作ってきます。台所借りますよ」
「えっ!?」
「このまま一日何も食べないつもりですか」
「いや、助かるけど…。いいの?」
氷月が料理!?という驚きの表情で彼を見つめるも、何を考えているか分からない無表情のまま「病人は大人しく寝て待っててください」という言葉を残して部屋を去ってしまった。要領いいし器用だし、できるかできないかと言われたら料理できるタイプだとは思うけど、キッチンに立つ彼がうまく想像できない。
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寝て待っていろと言われても、散々寝たので眠気が来なかった。一階のキッチンから聞こえてくる音に耳を傾ける。大分回復したので、料理をしている氷月というレアな姿をこの目におさめに行きたいと思う余裕も生まれてきた。そんなことをしたら氷月を怒らせるだけなので、行動には移さなかったけれど。
しばらくして、階段を上がってくる音が聞こえてきて、身体を起こす。
「お待たせしました」
「おお…!」
鶏もも肉と卵の雑炊。氷月の手料理を食べる日が来るなんて思ってもみなかった。体調に反して思いがけない出来事に心躍る自分がいるのが分かる。ありがとう!と伝えると、期待に胸を膨らませていた自分とは対照的に、眉をひそめている氷月に一瞬動きが止まってしまう。
あれ、もしかして怒っている?と肝が冷えた。学校帰りで疲れているだろうし、自分だってご飯食べたい時間だろうに、ここまでさせてしまったことに怒っているのだろうか。それに、何事にも完璧主義というか隙がない彼からしたら、体調管理ができてない自分は相当だらしない人間に映っているのかもしれない。急に不機嫌になった彼を、いやでも作るって言いだしたのは氷月だし、変に藪蛇つつくと更に怖い、と居心地の悪さを見て見ぬふりをして、食事に手をのばす。
「い、いただきます」
優しい味が口に広がって、自分がお腹が空いていたんだと気づく。見られていることも構わず、料理を口に運び続けていればあっという間になくなった。
「すごい、美味しかった」
「…当然です」
そう言った顔から先ほどの不機嫌さは消えていて安心した。気のせいか、氷月も安心したように息をはいている。あの氷月の手料理を食べたなんて、学校の人に話したら騒ぎになっちゃうな、と思い、この事は胸に秘めておこうと決めた。
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「料理、できたんだね」
「レシピ通りに作れば失敗しませんよ」
(あ、これめっちゃレシピ調べたやつだ)
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慣れない料理がうまくいってるか分からなくて不安だった氷月。(表現しきれない文才のなさ…すみません)