嘔吐中枢花被性疾患、簡単に言うと花吐き病なんて言われている。奇病として医療界では頭を悩ませている病気として、テレビも世界も今やその話題で持ちきりだ。
しかもその病気は片想いをこじら苦しくなると花を吐くという何とも傍から見たら無様な病気だ。有効な治療法は未だ発見されておらず、両想いになることによって完治するとテレビでは報道されていた。
そんな花吐き病の吐いた花に触れると自分も感染する、という何とも面倒な病気。
「それに、俺がなった…じゃと?」
やけに朝から咳が酷く、気にせず学校の準備をしている仁王の足元には見事に紅く咲き誇る山茶花が落ちている。
この山茶花はたった数秒前に、咳が酷くなり吐いたかと思ったがそんな口から出たのは咳ではなく山茶花だったのだ。
「はは、花の神様は何でもお見通しなんかのう…って下にブンちゃん待たせとったの忘れてたぜよ」
その辺りのゴミ袋に山茶花を入れ、明日の燃えるゴミと一緒に出せば分からないだろう、と思いつつ自分の体調が心配になる仁王であった。
「おい、仁王!朝練遅れるだろい!」
悪い悪い、と言いつつ家の鍵を閉め、丸井が漕いできたであろう自転車の後ろに乗る。
「のうブンちゃん。俺、花吐き病になったかもしれん…」
「あのテレビでやってる片想いで花吐くやつか?…てかブンちゃん呼びやめろ!」
相手は自分が一番知っている。3年C組の結城遥、テニス部の元女子マネージャー。そして幸村の彼女だ。
あああ、どうしたらええんじゃ。これもう戦う前からから負け確定の戦いぜよ。
「ちょ、仁王チャリ揺らすなよい!」
三年になったら勉強の方に力を入れたいからとマネージャーを辞めた結城は、密かに思いを秘めていたであろう幸村に告白し見事OKされ恋愛成就したという。
「ブンちゃん、俺死ぬまで花吐き病とか嫌なんじゃけど!」
「げっ…!」
駐輪場に着いた仁王と丸井を待っていたのは真田で、鉄拳の代わりに外周命令を貰い仁王と丸井は急いで着替えに走って行った。
「自転車に二人乗りした挙句、レギュラーメンバーが遅刻など……たるんどる!!」
「仁王が遅刻したせいだし!」
「悪いって言うたじゃろ?!」
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さっそく着替え、コートに入る前に外周をするのだがコート内で楽しそうに話す結城の姿が二人の目に入る。
「お、朝早いのに結城さん遊びに来てるじゃん。相変わらず彼氏の幸村君と話してるし」
少し走り出してそのへんの茂みに仁王は急いで隠れると、丸井が不思議に思ったのか着いてきていた。
仁王の口からは変わらず綺麗な山茶花が出てくる、そんな奇妙な光景に丸井は目をぱちくりさせながら見ていた。
「まじかよい…ほんとに花吐いてるし」
「結構これキツいんじゃよ…」
丸井は仁王が結城の事を好きなのは、彼女がマネージャーをしていた頃から知っている。
奇妙な山茶花に興味を持ち、触れようとする丸井を仁王は止める。
「やめときんしゃい、ゲロに触って感染するのとコイツは同じぜよ」
「まじかよ、とんでもねぇな」
華を一通り吐き終わり落ち着いた仁王は外周に戻り、よろよろと走り出す後ろを心配そうに丸井は走った。
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