火を付けに

高校生になりアルバイトをするようになって、仕事にも慣れ金銭的にも余裕になった私はどうしても彼氏に会いたくなり、ただいま飛行機に乗っています。

この三連休を使って沖縄に居る彼氏に会いに行きます…!ただ残念な事に今日の事を言っていないのと、余りお互い忙しくて連絡が最近途絶えていた事とこういうのを喜んでくれるかどうかという事が今私の頭の中では色々悩んでいた。


「そういうの迷惑です、とかゴーヤーの刑に処す!とか言ったらどうしよ…」


木手永四郎君に会いに行きます。いざ沖縄、美ら海へ!じゃなくて、いざ彼氏に会いに沖縄へ!


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流石に数回しか来たことのない、見知らぬ土地には携帯の地図があるとはいえ迷いそうである。観念して、とりあえず助けを求めるべく彼氏に電話をする。

数回コールが鳴り、聞き慣れた声が私の耳に飛び込んできた。


「おや、君から電話なんて珍しいですね。どうしましたか?」

「ふふ、永四郎くん…私今どこに居るか分かる?ふふふ」

「笑って何やら嬉しそうなのは分かりますが、携帯越しに聞こえるのは波の音…海にでも来ているんですか?」


相変わらずの丁寧口調と、久しぶりに聞く声に笑みが零れる。耳が癒されるというのはこういう事かも知れない。


「あのね、今…沖縄に遊びに来てるの。永四郎君に会いたくて…来ちゃいました」

「はぁ、冗談も程々にしなさいよ…」

「ほっ本当だよ!!空港まで迎えに来てよ…道分からないし、永四郎君に会いに来たのにこのまま帰らないと行けないの…」


電話越しだがガクっと落ち込む結城。


「〇×空港ですね?待っててください、急いで迎えに行きますので…返事は」

「はい」


―――
――



海を眺めて待って居ると、こちらに走ってくる木手の姿が見えた。木手は結城の姿が見えたので走るのを辞め歩いて近づいてくる。

すると結城が余りの嬉しさに走り出し、木手に抱きついた。木手は結城を抱き寄せ、顔にかかる髪を耳に掛ける。


「本当に来たんですね」

「永四郎君に喜んで欲しくて、私が会いたかったのもそうだけど…けどやっぱり会いたかった寂しかった」

「ええ、俺も寂しかったです」

「ほんと?」

「ほんとです、遥に会えて俺は今浮かれてますよ」


お互い顔を見ては笑い、距離は離れても思っている事は同じという事を再確認する。


「ね、永四郎君の声たくさん聞きたいの。私の名前たくさん呼んで?」

「沖縄に来てからか分かりましたが遥…とても甘え上手になってますね」

「ち、ちが…」

「俺から会いに行かないといけないのに、本当に申し訳ない」


悲しげな表情をしては、結城に顔を見せないように抱きしめ深いため息をする。


「いいの、私が会いたいを耐えれなかったから来ただけなんだから…永四郎君は気にしないで、来た私を満足させて帰してよね?」

「その言葉後で後悔しても、知りませんよ」


導火線に火をつけてしまったが、そんな怪しげに笑う木手を見て結城は来てよかったと微笑んだが、後で後悔することになるのはまた先のお話。



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