季節の変わり目で私は運悪く風邪を引いてしまい、学校をここ三日も休んでいる。学校が嫌いとかではないけど、休み過ぎると勉強追いつけるか心配になるし友達と楽しく過ごす学校に戻りたくなる。
嗚呼、熱のせいで目の前に同じクラスの比呂士君まで現れちゃったよ…。
「夢かと思っていますが、私は此処にきちんと居ますよ…ほら、触れる事も出来ます」
布団の脇から出ている結城の手を優しく取ると、そっと自分の手で包み込む。
「んん…本当に比呂士くん?」
「ええ、柳生比呂士ですよ。結城さんが余りにも心配になり来てしまいました」
どうやら、これは夢ではなく本当に比呂士くんらしい。家には多分母が居るだろうが、なんて言って上がってきたのか心配だ。
「フフ…遥さん途中言葉に出ていますよ、まだ夢の中だと思ってますか?」
「あ、もう…だってお母さんそういうの聞きそうだし…」
「大丈夫です…。きちんと伝えておきましたよ、遥さんとお付き合いさせて頂いてる…と、おやどうかなさいましたか?」
比呂士君は無意識に私の名前を呼んでいる事に気づいてないのかな…。
余りの恥ずかしさに布団の中に頭まで隠したので、柳生が心配の声をかける。
「比呂士君知ってて聞いてるでしょ…病人には優しくしてくださーい」
「ええ、もちろん。あなたの好きなプリンを買ってきたので…おっと」
プリンという三文字に釣られ、結城は布団から勢いよく顔を出し目を輝かせ柳生にプリンを催促する。
そんな姿に柳生は笑みをこぼし、ビニール袋の中からプリンとスプーンを渡す。
「ツラそうでしたら、食べさせてあげましょうか?」
「だ、大丈夫!食べれるよ」
そう言い頬を赤らめてプリンを口に運ぶ彼女は、私の前だからか元気に振舞ってくれていました。早くあなたの顔が見たいばかりに家まで来てしまったし、本当は迷惑ではなかったでしょうか…。
「比呂士君?なんか、元気ない??」
「あ、いえ!考え事をしていただけです!…それより熱の方は大丈夫ですか?」
失礼します、と柳生は自分の額に手を当てながら結城の額にも手を当てる。
「少しまだ熱があるようですね」
「そっそれは…」
「おや、また熱が上がりましたか?」
柳生との顔の距離の近さに、顔を赤らめている結城に気づき柳生は慌てて離れる。
「すみません、私が原因でしたか」
「うう、ごめんなさい」
「いえ、謝らないでください」
そろそろ帰ります、と荷物を持つとドアノブに手をかけた柳生が何かを思い出したかのように結城の元へ再び近づく。
「紳士らしくないですが、これからする行動は彼氏としての行動です」
再び結城に近づいたかと思うと、そっと額にキスを落とし耳元で何かを呟くと柳生は結城に一礼してから部屋を後にした。
「ひ、ひ…ひろしくん!?」
額にキスも良いですが、私としては遥さんの可愛らしい唇の方にキスをしたいので早く風邪を治してくださいね。
風邪が治ってキスを出来たか出来ていないかは、二人以外知らないのである。
戻る